七話 ページ9
Aside
心地の良い世界にいる。
私は、ふわふわした、雲の上にいて、裸足でゆらゆらと歩いている、
「………死ねた、のかな?」
周りには誰もいない、何もない世界をどれくらい彷徨っただろうか。
遠くに人影が見えた。
「誰か、いる…!」
初めてこの世界で自分以外を見た。
そっちに駆けていくと、だんだん人影がはっきりしてくる。
「嘘、………師範っ!」
ゆっくりと振り返った着物の女性は、両親が死ぬ直前に病死した、弓道の師匠だった。
「あら、A………。大きくなったね」
「っ………」
「…強く、なったね」
「見て、らしたんですか」
「ああ。ずっと。……Aを見ていた」
「ひっ……ぅ…う」
「泣かないの」
師範は私の背を撫でて優しく言った。
「私は嬉しいよ、Aが…道場を継いでくれて」
「し、はんっ……行かないでっ、」
「そうはいかないのさ。ここは狭間だからねぇ、もういかなくちゃいけない。……A、いいことを教えよう。…向こうへまっすぐ歩いていきなさい」
「やだっ、いかない、で、ください……っ」
師範に触れようとしたとき、彼女はふわっと微笑んで風のように消えていった。
……言われた方へ行こう。
師範に言われた通りに進むと、今度は2つの人影が見えた。
遠くからでも誰だかわかる。
「っ……!父さんっ、母さんっ!」
「A、………まぁ、一段と綺麗になって」
「…久しぶりだな、A」
二人に思いっきり抱きつくと、5年ぶりのぬくもりが返ってくる。
「二人は、っ、いかない、で……」
「ふふ、そうもいかないのよ。私達は完全に死んでいるし、Aはまだ戻れるもの」
「っ、私、まだ死んでないの?」
「ああ、Aはまだ間に合う。戻るんだ」
「嫌っ!私も、連れて行って……」
二人は困ったように笑った。
「だめよ、あなたを待ってる人がいるもの」
「いない、…いないよ、そんなの」
「赤髪の彼、ずっとAを待ってるよ」
父さんの言葉に、更に涙が溢れた。
「カルマくんはっ、私のこと……っ、もう好きじゃない…!」
「あら、なんでそう思うの?」
「彼は、死にたがる私は嫌いだからっ……!もう、何のために生きたらいいのか、わからない…」
「…なんのためでも、いいじゃないか。どうしても理由がいるなら、死にたくなかったのに死んでしまった俺達からのお願いってことにしよう。お前はいい子だから、断れないだろ?」
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さか - 絵もほんと上手で神だし、お話も凄く素敵です。更新待ってます! (2021年4月25日 7時) (レス) id: 084fbf2f8d (このIDを非表示/違反報告)
勾玉*(プロフ) - 夢主ちゃん私の好みドストライクなんですが……。続き、楽しみにしてます!!頑張ってください! (2020年6月8日 1時) (レス) id: 44b17a4264 (このIDを非表示/違反報告)
キヤナ - このシリーズ大好きです。面更新がんばってください。楽しみにしています! (2019年10月20日 21時) (レス) id: 256d9e1299 (このIDを非表示/違反報告)
白猫(プロフ) - 今日初めてこの小説に出会ったのですが、一目惚れして一気読みしてしまいました!夢主ちゃんが可愛すぎるし、カルマくんもかっこよすぎる、、、作者様のペースで更新頑張ってください(o^^o)これからも楽しみにしてます。 (2019年6月30日 0時) (レス) id: 44840d8a16 (このIDを非表示/違反報告)
鶴 - 続編おめでとうございますこれからも頑張ってください (2019年5月29日 17時) (レス) id: 0753bc1767 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あうおん | 作成日時:2019年5月26日 22時