十話 ページ12
その日から一週間、私はリハビリの為に入院することになった。
いきなり普通の食事を取ることも、歩き回ることも、一週間に及ぶ昏睡で衰えた体には難しかったから。
カルマくんは、……毎日、来てくれた。
学校が終わるとすぐに。
午後の日課が退屈な日は、昼休みにこっそり抜けて。
今日もカルマくんは、上体を起こしてベットに座る私のそばのスツールで、ずっと話し相手になってくれた。
「……カルマくん、リンゴ剥けたんですね」
「このくらいはまぁ。……あ、うま。はい、どーぞ。召し上がれ」
「私より先に食べるってどうなんですか……いただきます」
遠慮もクソもないカルマくんに呆れつつ剥いてくれたリンゴを頬張ると、シャクっと心地の良い音がして、甘酸っぱさが口いっぱいに広がった。
「………美味しい」
「でしょ？」
「ねぇカルマくん。……怒ってますか？」
リンゴを食べる手を止めて唐突に聞いた私に、カルマくんは笑って返した。
「まさか。不安にさせちゃったのは俺でしょ？むしろAちゃんが怒っていいんだよ」
「…カルマくんは、優しすぎます」
「そーお？」
わざと茶化して、満更でも無さそうに言ったのも、きっと私に罪悪感を感じさせない為で。
「カルマくん」
爪楊枝を皿に置いて、カルマくんの名を呼んでその胸に倒れ込むと、カルマくんはきゅっと抱きしめてくれる。
暖かくて、大きなその腕に包まれると、一度でも彼を信じきれなかった自分が恥ずかしくなる。
「どーしたの。また、不安になっちゃった？」
「……いいえ」
「じゃ、なに？甘えたくなった？」
「…それも、ありますけど。これは愛情表現、です」
「へえ？珍しい」
「……たまには、素直にならなきゃって」
そこまで言って、急に恥ずかしくなって離れると、カルマくんは私の顔を覗き込んだ。
「顔赤いよ？……可愛い」
カルマくんはそう言って唇をぺろっと舐めて、艶やかに小さく笑うと、私の唇を容易く奪った。
「い、いきなりは……ずるい、です」
「Aちゃんが可愛いのが悪い」
悪びれもなく言った彼は、いつも以上に言葉が真っ直ぐで素直で、きっとあんなことがあったあとだから私がもう道を間違えないように、沢山の愛を注いでくれてる。
彼は、優しすぎると…思う。
けど、疑り深い私には、そのくらいが丁度いいのかもしれない。
「私達…出会うべくして出会ったんでしょうね」
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さか - 絵もほんと上手で神だし、お話も凄く素敵です。更新待ってます！ (2021年4月25日 7時) (
レス) id: 084fbf2f8d (このIDを非表示/違反報告)
勾玉*(プロフ) - 夢主ちゃん私の好みドストライクなんですが……。続き、楽しみにしてます！！頑張ってください！ (2020年6月8日 1時) (レス) id: 44b17a4264 (このIDを非表示/違反報告)
キヤナ - このシリーズ大好きです。面更新がんばってください｡楽しみにしています！ (2019年10月20日 21時) (レス) id: 256d9e1299 (このIDを非表示/違反報告)
白猫(プロフ) - 今日初めてこの小説に出会ったのですが、一目惚れして一気読みしてしまいました！夢主ちゃんが可愛すぎるし、カルマくんもかっこよすぎる、、、作者様のペースで更新頑張ってください(o^^o)これからも楽しみにしてます。 (2019年6月30日 0時) (レス) id: 44840d8a16 (このIDを非表示/違反報告)
鶴 - 続編おめでとうございますこれからも頑張ってください (2019年5月29日 17時) (レス) id: 0753bc1767 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あうおん | 作成日時：2019年5月26日 22時
