・ ページ8
促されるまま、瞳を閉じた。
にしても、どうやって祓ってるんだろ?
昔、陰陽師の息子だとか言う同級生にも祓えなかった。
…あ、それはインチキだったから関係ないか。
そんなことを考え初めて少しして、鋭い風が私の頬を掠めた。
ずっと意識しないよう頑張っていた童歌は完全に消え去り、周りの喧騒が耳に戻ってきた。
「ん、もういいよ」
目を開けると、視界の端にいつもいる霊はいなかった。
「ありがとうございます……」
私はしどろもどろになりながらも頭を下げる。
少しして「お礼なんていいのに」と笑う声が聞こえ、頭をあげた。
あ、そういえば。
「あ、あの!どうしても聞きたいことがあるんですけど!」
久しぶりにあげた大声。とは言っても、いつも蚊が鳴いてるみたいな声と言われる私の精一杯の声だから、大きさはたかが知れているが。
「五条さんは何者なんでしょうか!?」
私の声にキョトンとして、こちらを見る五条さん。
しかし、すぐにお腹を抱えて笑い出し、
「そうだよね。普通気になるよね」
と言う。そして、私との距離をグッと縮め、
「────でも、秘密」
とさっきまでとは打って変わって、艶っぽく笑ってみせた。私の唇に人差し指を当てながら。
「秘密が多い方が、こういうのはきっと楽しいよ」
「…?」
こういうのって、どういうの?
悩んでみたものの分からなくて、首をかしげる私。
そんな私を見て五条さんはまた笑う。
「あー、いや、何でもないよ。忘れて」
一人笑う五条さんと置いてけぼりの私。
それでも、ほんのちょっぴり楽しいと思った私はおかしいのでしょうか?
───そこから、「すぐそこだから別にいいです」と言ったものの、駅のホームまで送られた。
とは言っても、時間があったので、お互い自己紹介したり、お礼にと私が缶コーヒーを奢ったりした。
そして、別れ際。
「じゃあね、A」
なんて言われたもんだから、ドキドキせざる終えなかった。
86人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:せみ。 | 作成日時:2021年2月7日 20時