祓い呪われ、愛されて【五条悟】 (ページ2)

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考え事をしていたため、傘をこちらに傾ける影が目の前に現れたことに気づかなかった。

顔を上げて男性を見た私は思わず息を呑んだ。目の前にいるのはとんでもない美丈夫だったから。サングラス姿もほんの少し濡れた白髪も様になっている。

私は思わず言葉を失った。
かっこよさに目を奪われたのもあるけど、バイト先の人にも煙たがられている私にとっては、声をかけられるということは久しぶりだったから。

「あ、えっと、だ、大丈夫です」

反射で口から出た言葉は思ってたことと真逆だった。
なんで、素直に言葉にできないんだろ？
自責の念に駆られ目を逸らした私を見て、男性はアハハッと口元を隠しながら笑った。

「そう？俺にはそう見えないんだけどなー」

男性はそう言い、私の目の前にしゃがみ込む。そして、おもむろに私の頭を撫でた。
「きゅ、急に何するんですか！」そう言おうとしたが、その瞬間体がふわりと軽くなったのを感じた。
それと同時に、小さい赤玉と取り憑いていた霊が灰になるのが視界の端で見えた。

「え？」

なんで？頭ははてなで埋め尽くされる。
一瞬のうちに情報量が多かった。私は狼狽してしまう。

「どう？楽になった？」

置いてかれている私を他所に、男は優しく微笑みかける。
私の頭は絡まった黒い糸みたいで何も考えられなくて、「はい……」と条件反射で言ってしまった。

「ならよかった」

そう言い、男はまた頭をポンポンと触る。

「じゃ、とりあえず今日はそれだけだから。また体がだるいな、とか、運が悪いなってなったら、ここに電話して」

立ち上がる男は、私に何かの切れ端と思われる紙を渡し、どこかへ行ってしまった。

……一体、なんだったんだ？

明らかに怪しいし、握らせられた紙切れも怖かった。

でも、久しぶりに気分が回復したのは事実だったし、私だって、女の子だ。かっこよかったと思う気持ちも少なからずあった。

紙切れに書かれた名前────五条悟さんと彼はいうらしい。

私の毎日が目まぐるしく変わる予感がしていた。

雨は少し弱まった気がする。