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「でも、駄目だった」
エイジの声が微かに震える。
「俺が突き放そうとしたくせに
苦しくなって……結局出来なかった」
意地悪で、でもそれ以上に優しい彼の真意。
そんな葛藤があったなんて知らなかった。
「……」
私は何も言えなかった。
たぶん今、口を開けば、
『好き』だとこぼれてしまうから。
泣きそうなほど膨らんだ想いを
この先どうしたら良いのか─────。
(エイちゃんは知ってる。私の気持ちを)
でもそれを、
私の言葉で伝えてしまって良いのかな。
「……っ」
彼の背中に腕を回した。
そんなことじゃ届かないと
分かっているけど
そうせずにはいられなかった。
「本当のこと言っていい……？」
震える声で訊くと、
エイジは「いいよ」と頷いた。
もう阻むものなんてないのだから
素直になってしまおう─────。
きっとこれは、
私たちの関係を壊す言葉。
二度と戻れない、
境界線の先へ繋がる言葉。
もしかしたら
後悔することになるかもしれない。
だけどそれ以上にもう、
抑え込むことなんて出来なかった。
「あのとき嫌いって言ったけど
本当は……、本当はね─────」
胸が詰まる。
泣きたくなんてないのに涙が込み上げてきた。
エイジは黙ったまま
ただ私を抱き締めていた。
意地を張らないで。
今度こそちゃんと、素直になるから。
「エイちゃんのことが好き」
言ってしまったら
せき止めていたものがあふれ出した。
涙も。 “好き”という想いも。
目に見えないその想いを
どうにか形にしたくて
今まで以上に強く抱き締め返した。
届け……。
届け─────。
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2017年7月26日 20時
