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翌日、たまたま遭遇したそらちぃと
話しながら講義に向かう。
「Aってさ、
俺のことは“そらちぃ”なのに
エイちゃんはエイちゃんだよね」
「何か慣れちゃって」
直接出逢う前からそう呼んでいるので
それで浸透してしまっているのだ。
「いいなぁ！
俺のことも違う風に呼んでよ」
まるで駄々をこねる子どものように
唇を尖らせて拗ねる彼。
「どんなふう？」
「そら、がいい」
はにかむ表情がちょっと可愛くて
心が擽ったくなったのは内緒。
「……そら」
試しに呟いてみた。
呼び方を変えた、ただそれだけで
今までよりも近くに感じる。
「……」
と、無反応なそらちぃ────そらに、
ふと不安になって隣を見てみると
「えっ」
思わず声に出して驚いてしまった。
ただ名前を呼んだだけなのに
彼が本気で照れていたから。
手の甲で口元を覆って赤い頬を腕で隠している。
「……ふふ」
そのギャップに小さく笑うと
「笑わないでよ」
そらはまた拗ねたように言ったのだった。
*
「ところでさ、
Aってエイちゃんのこと好きなの？」
普段の調子に戻った彼は
意を決したように訊いてくる。
「……！」
あまりに唐突で黙り込んでしまった。
「……好きなんだ」
確認するような口調のそら。
私は小さく頷き、
「……好き」
そう認めるしかなかった。
「そっかぁ。エイちゃんかぁ……」
そらちぃは悲しそうに笑う。
儚げに見えた。
「何であんな奴、って思うのに、
気付けばエイちゃんのことばっかり……」
今だって、そう。
心のどこかでいつも思ってる。
“会いたい”と。
他の誰でもない、キミに。
ふと、そらが立ち止まった。
それより数歩進んだところで
私も立ち止まり彼を振り返る。
「どうしたの……？」
その問いには答えずに
そらは俯いていた顔を上げた。
「好きだよ」
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2017年7月26日 20時
