#27 ページ27
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「本当に平気。 何でもないってば」
改めてそう言っても
エイジには通用しなかった。
「言えないこと？
そんなに俺って頼りない？」
「別にそういうわけじゃないよ」
嫌な空気が流れる。
そらちぃにああ言われた以上、
私の口から一切を話すわけにいかないのは、
「分かってよ……」
呟くと今朝のようにため息がこぼれた。
「何それ。
こっちは単に心配してるだけじゃん」
批難するような口調に
思わずきつく言い返してしまう。
「そんなの頼んでない！」
「あっそ。 じゃあもう聞かない」
彼は冷たく言い放ち、黙々と食事を始めた。
(あ……)
しまった、と後悔しても時既に遅し。
(また喧嘩になっちゃった)
今度は完全に私の八つ当たりだ。
エイジに当たるのは違うのに。
謝らなきゃいけないのに。
頭では分かっている、けど。
(あんな言い方しなくたって……)
何処かに逃げ道を探してしまう。
「……」
ちらりと横目で窺うとその冷たい表情に
怯んでしまって言葉が出ない。
(あぁ……私の馬鹿！)
後悔の念に押し潰されそうになっていると
「あれ、二人とも久しぶりー」
明るい声が重たい空気を吹き飛ばした。
「あ、ツリメとリっくん。 久しぶり」
小さく手を振りながら言う。
「俺は“久しぶり”じゃないだろ」
エイジは二人にそう突っ込んだ。
明るい声の主はツリメで、彼らは、
既に食事を済ませたのか
手には何も持たずに歩み寄ってきた。
「なになに？ 二人でご飯？」
冷やかすようなツリメに続いて、
「二人って仲良いよねー」
にこやかなリクヲの声。
「「誰がこんな奴！」」
ここぞとばかりに否定したつもりが
彼の低い声と重なってしまった。
驚いて、思わずエイジと顔を見合わせる。
だけど直ぐに先ほどのことを思い出して
ふい、とお互いほぼ同時に逸らした。
「えー、めっちゃ仲良いじゃん」
ツリメが笑いながら再び同じ事を言うと
「良くないし」という私の声が
「良くねーし」という彼の声と
再び重なって、
二人にまた大ウケされてしまった。
*
(謝らなきゃ)
午後の講義を終えて、
私はいつかのそらちぃみたいに
大学の門の前で
エイジを待っていた─────。
.
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2017年7月26日 20時
