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座席に座り、電車に揺られていると、
「あ、Aだ」
「本当だ。 おはよー、A」
頭上からそんな声が降ってきて
顔を上げるとそこには
エイジとそらちぃがいた。
「おはようー」
欠伸をしながら答えると
エイジが「欠伸しながら言うな」と
額を小突いてきた。
「痛った！ 馬鹿エイジ」
額を擦りながら、軽くエイジを睨むと
「馬鹿って言った方が馬鹿だし」
と彼はそんなふうに言い返してくる。
「ガキんちょか」と、
そらちぃが笑って突っ込んだ。
心の隅で感じる、
“楽しい”という気持ちを
それ以上に育まないように
私は膝の上で小さく拳を握り締めた。
*
「ねー、いいじゃん」
「ちょっとぐらい付き合ってよ」
先ほどから進まない状況に
次第に苛立ちを感じ始めていた。
(どうしてこうなったんだっけ……)
─────時は十分ほど前に遡る。
講義を終えて一人歩いていると
いかにもチャラそうな、
数人の男子学生に囲まれた。
「今、ヒマー？」
そんな決まり文句から始まったこれは
世に言うナンパという奴で。
断っているのに、聞く耳を持たず。
逃げようとしても道を塞がれ。
(もう、いい加減にしてよ)
大学の中でナンパされたのなんて初めてだ。
「ね、行こ？」
一人が、私の手首を掴む。
その不快感に思わず顔を歪めた。
「触らないで！」
耐えられず、そう振りほどく。
怒り出して暴力に走られたら、と
一瞬青くなったが、
「抵抗してんの？ 可愛いね」
なんて顎を掬われて、
吐きそうなほどの拒絶反応を覚える。
(もう嫌だ……)
いくら強気に出ても
私の力では敵わないことを悟った。
誰か、助けて─────。
「何してんの？」
少し離れた所から聞こえてきた声に
その場にいた全員がそちらを向く。
「え、エイジ！」
私は縋るように彼を見る。
と、エイジはゆっくり歩み寄ってきた。
「こいつ、俺の彼女なんだけど」
.
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2017年7月26日 20時
