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声色とは打って変わって優しい眼差しにたじろぐ。
それを隠し通すことが出来なくて、しなくても良い反論を口にしてしまう。
「し、してるよ！
だってそらは好きな人なんだよ？」
「だったら、嫌じゃなかったの？」
「え……？」
そらに迫られて、口付けを落とされて。
本当なら嬉しいはずだけど……。
嫌じゃなかったなら、何で泣いたりしたのだろう。
「嫌、だったんだ。 私」
思わず呟く。
そのことに、初めて気がついた。
そらに嫌われたくない。
そんな感情は常に持っていても、利用されることは嫌だった。
想いのない行為に踏み切ることが嫌だった。
都合の良い存在に、関係になることが嫌だった。
私が望んだのはそんなものじゃない。
私の想いはそんなに安くなんてない。
そんなふうに、頭の片隅では思っていたんだ。
失望したのかもしれない。 彼に。
でもそんなの、何様？
勝手にそらという人物像を作り上げて、それに反したら失望だなんて。
望みなんてないのに、期待してしまう私が悪いだけだ。
「……Aは悪くないよ」
まるで心を読んだみたいな言葉に驚いて勢いよく顔を上げた。
「この先どんな決断を下しても、あいつとどうなっても、自分を責める必要なんかない」
彼はどこか遠くを見据えたまま、優しい言葉を投げかけてくる。
やめてよ。 ……泣いちゃう。
唇を噛み締めて必死に堪えた。
「明日、ってか今日、休み？」
不意にエイジがこちらを向いて尋ねてきた。
私は慌てて泣きそうな気持ちを拭い去って頷く。
「じゃあ、どっか行こ」
1時間というタイムリミットもない、これはデートのお誘い？
「晴れても晴れなくても。 ……約束ね」
差し出された彼の小指を見つめ、私も自分のそれを絡ませた。
「分かった」
気づけば微笑がこぼれていた。
飾る必要のない彼との時間は、あらゆる傷を癒してくれる。
今日の私の選択が、この前彼に話した内容と矛盾してることとか、気づいているだろうに切り込んでこない優しさが沁みた。
エイジの鋭さはいつも私を助けてくれる。
「……エイジって本当、優しいね」
指を解いて言った。
彼はちょっと驚いたような表情を浮かべ、顔を逸らす。
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2020年2月15日 8時
