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辛さや苦しさが、ときめきや幸福感に勝ってしまっていたのは、私が気づいていたからだ。
自分の本心に。 そらの本心に。
「……」
私は確かに、これがラストチャンスだと思った。
そらとあの子の仲を引き裂くことは出来なくても、そらの目に私が私として映ることくらいは出来る気がしたから。
二人が友だち以上の関係になれば、そらはもう私なんて見向きもしてくれないかもしれない。
そうなる前に、一歩でも近づきたかった。
友だちとも彼女とも違う関係になってしまっても。
……そらは、意外と鋭く残酷なところがある。
エイジの持つ鋭さとはまた別の鋭さ。
だからきっとそらは最初から、私の想いに気づいていた。
気づいていたのに、ずっとずっと知らないフリをして私から目を逸らしていただけなんだ。
彼は、自分へ向けられた好意には敏感で、そのどれもを手放したくないと思っている。
応えられないものだとしても、多くの人たちに、自分を好きでいて欲しいと望んでいる。
……私と、同じだ。
そのための武器である穏やかな笑顔、柔らかな態度、整った見た目、それらすべてに滲む嘘に私は飲み込まれてしまったんだ。
それでも、以前はまだ良かった。
私が彼の嘘や本心に気づいていなかったうちは。
ただ純粋に好きでいられた。
傷ついたとしても、叶わぬ片想いで済んだはず。
でも、今はもう悟ってしまった。
そらは、私の気持ちを知って、拒みも受け入れもしなかった。
そして……現在、私はそらと二人でここにいる。
何度キスを繰り返されても、その先の行為に及んだとしても、そこに何一つ、私への想いなんてない。
宙に浮いたままの私の“好き”を、彼が利用しただけ。
都合の良い存在にしようとしただけ。
彼があの子と上手くいったら、何事もなかったかのように捨てられるのがオチだろう。
無感情な口付けや虚しい温もりを求め続けるのがあまりに悲しかった。 ……それが私の涙の理由だ。
ならば断れば良かったのに。
そう思うのに、きっとやり直しても同じ選択をする。
私の気持ちは自分の想像以上に大きくて、お酒なんかでは
でも、そらは優しいんだ。
今だって労わってくれてる。
たとえ偽物でも、これまで私にくれた言葉は消えない。
出会ったときから今まで。
どれかひとつくらいは、本心が混じっていたらと願ってしまう。
馬鹿だなぁ……。
ただ都合の良い女友達ってだけだったのに、まだ期待してる。
想いは簡単に消えてくれない。
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2020年2月15日 8時
