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食器棚の中はやけに可愛らしい食器が多かった。
適当に星の柄の皿を取り出し盛り付けて、リビングに運んでいく。
そらが簡単にセッティングしてくれたテーブルの上に料理を並べた。
「すげぇー！ 旨そう！」
そらが感嘆の声を上げ、心底嬉しそうに笑ってくれる。
「いい？ 食べて」
「もちろん！」
二人、クッションを座布団代わりに床に座って「いただきます」と手を合わせた。
丁寧に切り分けたハンバーグを一口、口に運んだそらの反応を窺い見る。
先ほどとは違う意味で、心臓がドキドキした。
芳しくない評価だったらどうしよう。
「うっま！ やば」
手で口元を覆って驚きと感動をそのまま体現したような表情の彼。
「本当!? 良かった……！」
ほっと一安心して私も食事を始める。
ハンバーグは我ながら上出来だった。
ご飯を食べながら、料理中と同じくそらと楽しく話した。
お酒を飲んでいたから、だいぶ気分も高揚していたと思う。
「あー、Aが彼女だったら毎日幸せだな」
でもたったひとつ、その呟きだけは、聞かなかったことにした。
食後、材料の余った分で小さめのハンバーグを焼く。
皿に乗せて冷ましておいて、後で冷蔵庫に入れておこう。
すっかり空になった皿をそらがテーブルから運んできてくれて、私が洗って、彼が拭いてしまってくれた。
冷凍庫にストックしてあったカップのアイスを食べよう、とそらがそれを2つ持って先にリビングに戻って、私は手を洗ってからそれに倣った。
ご飯を食べる、という目的が達成された今、手持ち無沙汰になって家の中の静けさが一層際立っていた。
心臓が跳ねるたび、その波に合わせてつきんつきんと胸に痛みが走る。
何だろう、この痛み……。
「どうかしたの？」
ソファーに座って先にアイスを頬張っていた彼が、立ち尽くす私を振り返った。
「……う、ううん。 何でもないよ」
ハッとして慌てて笑顔を貼り付けると、彼の隣に腰を下ろす。
「何見てるの？」
「映画。 つけたらやってたから」
彼の言う通りテレビで流れているのは、何となく名前を聞いたことがあるような洋画だった。
ちらりと時計を見ると夜の10時を過ぎている。
いつの間にそんなに時間が経っていたのだろう。
しばらく黙って映画に集中していたがふとテーブルの上に、そらが持ってきてくれたカップのアイスを見つけて、手を伸ばした。
────と。
「A」
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2020年2月15日 8時
