#35 ページ35
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それから数日後。
日直の仕事で一人残っていた私は
日誌を書き終えて立ち上がった。
窓の外を眺めながら軽く伸びをする。
(陸くんは……)
もう帰っちゃったかな。
そういえば、
一人、教室を出ていった所を見た気がする。
一緒に帰りたかったな。
「……」
こうしていると
初めて陸くんと話したあの日を思い出す。
─────思えば、
あれがはじまりだった。
本気で誰かを好きになったのなんて、初めて。
「戻ってきてくれないかな……」
なんて呟いてみる。
追い掛けようかな─────と
今更なことを考えていたとき。
─ガララ……
静かに、教室の扉が開いた。
「えっ……」
「陸くん……？」
二人して、驚く。
「何で─────」
(戻ってきてくれないかな、って)
思ったら本当に、来てくれた。
「俺は忘れ物取りに来た、だけ……」
自分の机の中を漁りながら陸くんは言う。
「そ、そっか」
何故かいつもよりも意識してしまって焦った。
……でも、こんなシチュエーションは
増してあの日を思い出させる。
「何か、あの時みたいだよね」
忘れ物を回収した陸くんが
机の上に座って、笑う。
「……私も、同じこと思ってた」
そう笑い返すと、
陸くんは不意に黙り込んだ。
「どうかした？」
何かおかしなことを言ったかな、と
不安になって尋ねると
「ううん……。 何か、ほっとした」
そんなふうに彼はまた笑った。
「最近ずっと避けられてたから
嫌われたのかと思って─────」
「そんな！ 嫌うなんて、そんな訳……」
私がそこまで言うと
陸くんの穏やかな声が遮った。
「じゃあ、好き？」
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2017年7月1日 18時
