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「じゃあ、私じゃない他の誰かなんでしょ？」
すべてを見透かすような眼差しで明日香は言った。
「え……」
「私じゃない他の誰かに、
気を遣って陸くんを避けてるんでしょ」
まるでそれを責めるような口調で。
「そういう優しいとこ、
Aの良い所だけどさ……
それがかえって裏目に出てるんだよ」
違う。
そんなんじゃない。
私は、優しくなんてない─────。
「ち、違うの！」
私は彼女の前で初めて大声を出した。
今までなら「そうか」と納得して
引き下がったかもしれない局面だけど
今の私は、今までの私とは違った。
「そんなんじゃない……」
心の中で叫んだ言葉を声に乗せる。
「私は、優しくなんかないよ……」
“他の誰か”─────つまり、
陸くんの好きな人に気を遣ってる訳じゃない。
二人がうまくいってほしいから
身を引いてる訳じゃ、ないんだ。
今の距離を手放すのが怖くて、
でも……
他の誰かと陸くんが付き合うのは嫌で。
“友だち”なら、陸くんに彼女ができたときは
一番に「おめでとう」って
笑えなきゃいけないのに……。
「陸くんに好きな人がいるのに
私が傍にいるのも図々しいし、」
だからきっと、
私が彼を避けていた理由は。
陸くんに悪く思われたくなかった。
嫌われたくなかった。
もし陸くんが好きな人と付き合ったとき
そのことを一番に聞きたくなかった。
自分が傷つくのが怖かった。
いろんな気持ちが交錯して
ぐちゃぐちゃになって、
「どうすればいいか分かんないの」
でも、本当は。
「諦めたくないよ……！」
胸の内を吐露してしまうと、
感情が顕になって
涙がぽろぽろとこぼれ落ちた。
暫しの沈黙の後、
「─────不安に思わなくていいよ」
彼女の力強い声が聞こえた。
「陸くんは……Aの気持ちを、
ちゃんと受け止めてくれる」
*
もう、想いは止まらない。
“好き”があふれる─────。
陸くん、ごめんなさい……。
私はもう、キミと、
“友だち”でいられない─────。
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2017年7月1日 18時
