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陸くんが帰って、再び一人になった教室。
何だか熱い頬といつもより速い心音を
落ち着かせるように息をついた。
そして、しゃがみ込む。
(……陸くん)
心が、満たされる。
両手で握り締めたスマホ画面には
LINEが開かれている。
“新しい友だち”の欄に表示された、
彼の名前を見ると、嬉しくて嬉しくて。
立ち上がって、
鞄を肩に掛けると教室を後にする。
あくまでいつも通りに歩くけれど
本当はスキップしたいほどだった。
*
陸くん。
……心の中で反芻すると、
あの柔らかい笑顔が蘇った。
そのたびに、頬が緩んでしまう。
同時に頬が火照って自分でも戸惑っていた。
陸くんは、こんな私を受け入れてくれた。
友だちになろうって、言ってくれた。
……こんなの、初めて。
もっと、話したい。
もっと、知りたい。
上手く紡げなくても
それでも私、キミとなら話せる。
*
喜悦も幸福感も、
それは、決して恋愛感情ではないと
自分に言い聞かせた。
私は、決して陸くんと
“友だち以上”になる訳にいかない。
それは初めからわかっていたことだ。
相手がYouTuberだから、とか
こんな私とは不釣り合いだから、とか
勿論それらもあるかもしれない。
だけどそれ以上に、
もっと大きな理由がある。
ねぇ、聞いて!
今日 陸くんと目が合ったよ〜>
そう親友からLINEが来た。
“大きな理由”とは、親友のことだ。
彼女は以前から陸くんのことが好き。
そのことは、
親友である私だけに教えてくれた。
だからこそ、裏切る訳にはいかない。
彼女は、私の恩人でもあるから……。
ほんと!?
よかったね!!
いつもなら、素直に喜べるのに何でかな……。
今日はどうしても、
胸に何かがつかえて上手く言葉に出来ない。
なんて、考えていると。
陸くんやっほー!
さっそくLINEしてみたよー
陸くんからそんなメッセージが来て、
どくん、と心臓が跳ねた。
突然でびっくりしたからだ……。
そう、きっと、そう。
「なんて、返事しよう」
同級生の男子とLINEなんて
したことがないから分からない。
それに加え、先ほどの、
明日香とのやり取りも相俟って
返信を迷ってしまう。
「よし……」
結局、10分くらい、
私の指はキーボードの上を彷徨っていた。
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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2017年7月1日 18時