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#28 ページ28

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“明日香のこと、好きじゃない……”






そう告げた陸くんの声は

苦しげに掠れていた。

覚悟はあっても悪者になりきれていない私は

その言葉に喜ぶことなんて出来なかった。

“その事実を知ったら
彼女はどれほど傷つくだろうか”

そうは思っても、

だからと言って陸くんを責めることは、

当然出来るわけがなかった。



「……そ、そうだったの……」

陸くんに気の利いた返事も出来なくて。

結局何も出来ない自分を

“情けない”と責めた。

でも、情けないままで終わらせたくないから

いつもより少しだけ勇気を出した。

「何で私に……?」

わざわざ伝えたのか、尋ねた。

「何でかなぁー」

陸くんは、やんわりと頬を緩める。

「最低だと思われても、
Aには本当のこと
知ってて欲しかったから……かも」

はにかんだ陸くんと目が合った。

どくん、と心臓が跳ねる。



止まった時間が

動き出したような気がした─────。



*



翌日、玄関のドアを開けると門の前には……

「おはよーう、A」

そう言って満面の笑みを浮かべる、

陸くんが立っていた。



「お、おはよう!」

驚き半分、嬉しさ半分で、

陸くんの前に飛び出していく。

『あのね……。
私、陸くんと付き合うことになったんだ』

そう告げられたあの日、

家の前で泣いて蹲っていたから

たぶん彼は私の家を知っていたのだろう。

横に並んで、歩き始めたとき、

陸くんがはっきりと言った。



「俺、昨日ケジメつけた」



何に、なんて

野暮なことは聞かなくてもわかる。

でも陸くんはぼやかしたりしなかった。

「曖昧な俺にも、優柔不断な俺にも、
意味のない関係にも……」

そこで一度言葉を切ると、立ち止まった。



ローファーの底でアスファルトを鳴らし

私の目の前に立つ。

私の身長に合わせるように少しだけ屈む陸くん。



「これからは自分の気持ちに
正直でいようって決めた─────」



ふわりと柔らかく微笑んでいるけれど

その笑顔の奥には固い決心が見られた。

私も、決めなくちゃ。

想いを告げる覚悟を──────。



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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2017年7月1日 18時

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