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でも、今は違う──────。
今は、悪者になったって構わない。
最低な奴だと後ろ指を指されても。
明日香が陸くんを好きになった瞬間から、
私が陸くんを好きになった瞬間から、
どちらかは必ず傷つく運命……
それは、きっと避けられない。
だから、
何もしないで自分の気持ちを封じ込めるのは
もう昨日で終わりにしたんだ。
黙って傷つくのはもう充分……、
わがままで自分勝手だと
言われるかも知れないけれど
私は最後まで、自分の想いを貫くと決めた。
「……っ」
机の上で、ぎゅっと拳を握り締める。
俯いていた顔を上げ、
陸くんの方へ視線を向けた。
私─────。
(陸くんの本当の気持ちが知りたい)
*
その後、
話し掛けるタイミングが掴めないまま
放課後になってしまった。
私は一人、帰路につく。
(“自分に嘘はつかない”
って、決めたはいいけど……)
それだけでは、何も物事は変わらない。
当然のことながら、でも難しい。
(陸くん……)
いつかのように─────
名前を呼びながら追いかけてきてくれたなら。
振り向いて「どうしたの」と尋ね、
『どうもしてないよ、
ただ一緒に帰りたかっただけ』
そんなふうに笑ってくれたなら……。
どんなに、いいだろう。
校舎の方を振り向いてみても
見える人影に彼の姿はない。
(……なに期待しちゃってるの、私)
自分自身を嘲るように笑みをこぼして
再び前を向いたとき、
「A……!」
誰より好きな人の声が、背後から聞こえた。
驚いてバッと振り返ると、
キミが脇目もふらず走ってきていた。
「り……っ」
陸くん、という言葉は
胸が詰まって出てこなかった。
……嘘みたい。
まさか本当に、来てくれるなんて。
「な、何で……どうして」
他に言いたいことはある筈なのに
唇の隙間からこぼれるのはそんな言葉たち。
陸くんは、私と向かい合う。
「ただ一緒に帰りたいだけ。……駄目?」
やっと、やっと。
真っ直ぐに目が合った─────。
「駄目なわけないよ!」
私がそう左右に首を振ると
彼は「良かった」と、
あの人懐こい笑顔を見せた。
鼓動がどんどん速くなっていく。
今この瞬間の欠片を一粒たりとも
こぼしたくない─────。
*
「……最低でごめんね」
歩き出したとき、
隣に並んだ陸くんが小さく謝ってきた。
私はその横顔を見上げる。
陸くんは足元に視線を落としたまま
言葉を紡いでいく……。
「俺、本当は─────」
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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2017年7月1日 18時