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#27 ページ27

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でも、今は違う──────。



今は、悪者になったって構わない。

最低な奴だと後ろ指を指されても。

明日香が陸くんを好きになった瞬間から、

私が陸くんを好きになった瞬間から、

どちらかは必ず傷つく運命……

それは、きっと避けられない。



だから、

何もしないで自分の気持ちを封じ込めるのは

もう昨日で終わりにしたんだ。

黙って傷つくのはもう充分……、

わがままで自分勝手だと

言われるかも知れないけれど

私は最後まで、自分の想いを貫くと決めた。



「……っ」

机の上で、ぎゅっと拳を握り締める。

俯いていた顔を上げ、

陸くんの方へ視線を向けた。

私─────。

(陸くんの本当の気持ちが知りたい)



*



その後、

話し掛けるタイミングが掴めないまま

放課後になってしまった。

私は一人、帰路につく。

(“自分に嘘はつかない”
って、決めたはいいけど……)

それだけでは、何も物事は変わらない。

当然のことながら、でも難しい。



(陸くん……)

いつかのように─────

名前を呼びながら追いかけてきてくれたなら。

振り向いて「どうしたの」と尋ね、

『どうもしてないよ、
ただ一緒に帰りたかっただけ』

そんなふうに笑ってくれたなら……。

どんなに、いいだろう。

校舎の方を振り向いてみても

見える人影に彼の姿はない。

(……なに期待しちゃってるの、私)

自分自身を嘲るように笑みをこぼして

再び前を向いたとき、



「A……!」



誰より好きな人の声が、背後から聞こえた。

驚いてバッと振り返ると、

キミが脇目もふらず走ってきていた。

「り……っ」

陸くん、という言葉は

胸が詰まって出てこなかった。

……嘘みたい。

まさか本当に、来てくれるなんて。



「な、何で……どうして」

他に言いたいことはある筈なのに

唇の隙間からこぼれるのはそんな言葉たち。

陸くんは、私と向かい合う。



「ただ一緒に帰りたいだけ。……駄目?」

やっと、やっと。

真っ直ぐに目が合った─────。

「駄目なわけないよ!」

私がそう左右に首を振ると

彼は「良かった」と、

あの人懐こい笑顔を見せた。

鼓動がどんどん速くなっていく。

今この瞬間の欠片を一粒たりとも

こぼしたくない─────。



*



「……最低でごめんね」

歩き出したとき、

隣に並んだ陸くんが小さく謝ってきた。

私はその横顔を見上げる。

陸くんは足元に視線を落としたまま

言葉を紡いでいく……。



「俺、本当は─────」



.

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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2017年7月1日 18時

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