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#03 ページ3

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「私、話すのが苦手で……。
特に男の子が相手だと緊張しちゃって」

何を言ってるんだろう。

とは、自分でも思う。

だけど、例えば

キミの言葉に対する私の返事が

素っ気なかったとしても

それは決して嫌いだからじゃない、と

知っていて欲しい。分かっていて欲しい。

その一心だった。



「そうなんだ? じゃあ今まで、
あんまり男友だちっていなかった?」

陸くんの声は相変わらず穏やかで優しかった。

「うん、いたことないなぁ」

男友だち、なんて呼べる人は今まで

一人としていなかった。

そもそもあまり、

男子に関わろうとしなかったから。

つい癖で俯いてしまうと

「ふむふむ」と陸くんの相槌が聞こえて

一拍置いた後に

柔らかい声が頭上から降ってきた。



「じゃあ、俺と友だちになろ?」



信じられない言葉に、

弾かれたように顔を上げると

思ったよりも至近距離に彼がいて

心臓が、やけに速くリズムを刻んでいる。

陸くんは机に座っていた筈なのに

いつの間にか、正面に立っていた。



「ともだち……?」

聞き間違いじゃないかと不安になる。

本当に今、“友だちになろう”と

そう言ってくれたのだろうか。

「そう、友だち!
今まで男友だちいたことなかったなら……」

陸くんが笑顔を浮かべる。

注がれる眼差しはこの上なく、

優しさにあふれていた。

「俺が、男友だち第一号ってことで」

その声に、言葉に、表情に、

心臓がどき、と跳ねた。

心が擽ったい。

でも、心地好い。

青い空に飛ぶ、しゃぼん玉が

ぱちんと弾けるように。

何かが、胸の奥ではじけた。



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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2017年7月1日 18時

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