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#14 ページ14

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翌日はいつもより早起きして、

二人分のお弁当を作った。

好きな食べ物とか嫌いな食べ物とか、

訊いておけば良かった、と少し後悔しながら、

だけど何だか心は晴れていて

朝からちょっと楽しかった。



朝食と、学校へ行く準備を終えて

玄関前で彼女を待っていると

今日一緒に行けない!ごめん!

そんなLINEが来た。

わかった! また学校でね!

肩に掛けた鞄を持ち直し、

お弁当が入った、

二つのランチバッグを持って一人、歩き出す。



「おはよ〜」

「あ……、おはよ」

そんな挨拶が聞こえて

それから見えた姿に思わず立ち止まる。

数十メートル先のカーブミラーの所に

彼女と、陸くんがいて

二人並んで歩いていく背中に

ちくりと胸が痛んだ。



「……」

提げたランチバッグの一つに

ちょっとだけ気持ちが重くなる。

浮かれ過ぎてたのかも……。

言われるがまま、お弁当を作ったはいいけど

果たしてこれで、良かったのかな。

……ううん、やめておけば良かった。

(一緒に行けないのは
そういうことだったのか─────)



*



学校に着き、教室に辿り着いた途端、

明日香が駆け寄ってきた。

「おはよう、A!」

「あ……うん。おはよう」

咄嗟にランチバッグを背に隠す。

最早、恒例行事と化した、

毎朝の彼女の惚気話もそこそこに

私は自分の席についた。



(……昨日の、)

不自然な態度やお昼の時の二人の矛盾に

どこか期待していたのかもしれない。

もしかしたら明日香は、

本当は陸くんとは付き合ってなくて

嘘をついたんじゃないかって。

都合のいいように考えていた。

そう思いたかっただけ、なんだけど……。

どんどん嫌な奴になっていくみたいで

今は、凄く自分が嫌い。



思わず俯いた頭上から

愛しい声が降ってくる。

「おはよー」

「陸くん、おはよう」

私の心の中のもやもやは膨らんでいく。

「何かありましたー?」

屈んだ陸くんは机に顎を載せ、

そう訊いてくる。

……いっそのこと、

ぜんぶ言ってしまいたい。

抱いてる気持ちや想い、

苦しみも全て打ち明けられたら

少しは心が軽くなるのかな。

伝えたいのに、伝えられない。

手を伸ばせば触れられるのに許されない。

その手は何にも届かない。



それでも私は、陸くんが好きなんだ。

Aって名前で呼んでくれたのも

“おはよう”って笑ってくれたのも

ぜんぶ、陸くんが初めてなんだよ。

そうしてくれて嬉しいのは

ぜんぶ、陸くんだけなんだよ。



私には、

キミしかいないんだよ─────。



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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2017年7月1日 18時

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