#最終話 ページ37
.
ずっと、ずっと。
この瞬間を夢見ていた─────。
*
あのときの辛さや苦しみ。
その時に流した涙。
あのときの喜びや嬉しさ。
その時の笑顔。
ぜんぶぜんぶ引っ括めて
この瞬間の為のものだとしたら。
今のこの幸せに、
すべてが繋がっていたんだと思う。
*
「俺は……Aのことが好き、です」
陸くんの声が耳に届いた途端、
私は全身から想いがあふれるのを感じた。
抑え込んできた気持ちが解き放たれた感覚。
あの日。
あの日から始まった恋─────。
届かない想いが苦しくて泣いた。
諦めなければいけないのに
出来なくて泣いた。
自分のずるさも、弱さも、
陸くんを好きになって初めて知った。
それでも。
胸の奥にずっと抱いていた想いだけは、
消そうにも消えなかったこの想いだけは、
あの日よりも大きくなって私の心で光っている。
「私も……」
“好き”
言葉にしたいのに先に涙があふれて
せき止められてしまう。
すべてが、本当に今までのすべてが、
一瞬でひとつに繋がった─────。
「陸くんが好き……! 大す─────」
言い終わらぬうちに
強く、でも優しく、
私は彼に抱き締められていた。
信じられないくらい、息が止まるくらいの
この幸せを噛み締める。
ありったけの『好き』を込めて
私も陸くんを抱き締め返した。
その隙間で、窓の外の空を仰ぐ。
睫毛に散った涙の粒に
夕日が反射してキラキラと輝いていた。
*
それから少しばかり経って、
私たちは並んでそんな空を眺めていた。
「陸くん」
そうやって名前を呼べば、
ふわりと笑って振り向いてくれるキミ。
「大好き……!」
何の躊躇も逡巡もなく、そう伝えられる奇跡。
陸くんはそっと、一瞬だけ、唇を重ねた。
「俺から離れないでね」
私の青春が、
キミ色に染まっていく─────。
─Fin─
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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2017年7月1日 18時