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突飛なことを言い出した親友を睨みつつ、そんな彼の発言を振り返る。
A。
確かに、れんは彼女をそう呼んだ。
ぎこちなくはなかった。
呼び慣れている感じというか、普段からそう呼んでいることが窺い知れるような。
呼び方なんてほんの些細なことだけれど、何だか気になった。
「へ、変なこと言わないで、れんくん」
委員長にからかわれたときは平然としていたAだが、今はちょっと取り乱しているみたいだ。
れんくん、か。
なんてことはない普通の呼び方。
でも、モヤモヤが払拭出来ない。
二人の間に、俺の知らない何かがあるような気がして。
*
ダンボールにリメイクシートを貼っていく作業に取り掛かった。
各々雑談を交わしたり、スマホでYouTubeを見たり音楽を流したりしながら自由に手を動かしている。
俺は、リメイクシートの包装を開ける作業をしていた。
男子たちは男子たちで盛り上がっているので良いとして、問題はAとれんだ。
れんが押さえるダンボールにAが丁寧にリメイクシートを貼っていく。
……ちょっと近くないか? いや、近い。 近いって……!
じーっと見つめていると、包装がビリッと派手な音を立てて破れた。
気付かぬうちに力が入っていたみたいだ。
「出来た!」
「おー、良いじゃん」
なんて笑い合う二人。
ちくちく疼く心臓。 その痛みに頭の中が掻き乱される。
あんなに仲良かったっけ?
俺が気づかなかっただけ?
それとも、ただの気のせい?
普段からあんな感じだっけ?
そうじゃないなら、俺の勘違い?
俺が勝手に、Aと仲良くなれた気でいただけだったのかな。
彼女と一番話せる存在だと思い込んでいただけだったのかもしれない。
────そう思うと、虚しいな。
簡単には変わらないもんなのかな、関係性ってのは。
誰かに対する感情も。 印象も、思いも。
良い方向に傾けばそれがベストだけど、いつもそうなるとは限らない。
だからこそ、俺は臆病だ。
一人でモヤモヤするくらいなら思い切って訊けばいいのに、それも出来ないから、余計心に霧がかる。
楽しそうな二人を見て募る感情の正体にだって、とっくに気づいているくせに、知らないフリを続けようとしている。
それをしたって未来が変わるわけではないと分かっているのに。
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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2019年9月6日 17時