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「居残りはいつから?」
「うーん、今日からする?
残れる人に残ってもらって」
私の問いに彼はそう答えた。
それを聞いたポキくんが「はい!」と手を挙げる。
「俺、残る!」
そう言ったポキくんが私の方を見やった。
「Aは?」と訊かれている気がした。
「私も、残ろうかな」
部活はやっていないし、帰っても特に予定はない。
それに、ポキくんがいるのなら、何だか楽しそうだ。
*
放課後は案外直ぐにやって来た。
今日から居残り準備をすることは一応委員長が皆に呼びかけたものの、チャイムが鳴ると、部活に走る人、帰る人が大多数だった。
残ったのは私とポキくん、それからポキくんの親友のれんくん。たったの三人だ。
でもこういうのは、少人数でやるのが楽しいのかもしれない。
委員長は部活だと言っていた。
申し訳なさそうに私たちに「よろしく」と言って教室を出て行った。
「まず何からやろうかねぇ」
れんくんが腰に手を当てながら言う。
「あ、昨日買ったもの持ってくるね」
と、私は教室の後方に向かい、自分のロッカーから百均の袋を取り出す。
それを手にして立ち上がったところで、廊下の方からドタドタと数人の足音が聞こえてきた。
勢いよく開かれた扉からクラスの男子たちが顔を覗かせる。
お調子者タイプの、いつも明るく笑っている男の子たち。
私もポキくんもれんくんも、驚いてそちらに目をやった。
「Aちゃん残るの?」
「委員長から聞いてきたけど」
彼らは口々に言って私を見る。
私のこと、名前で呼んでくれてるんだ……なんてどうでもいいことを考えながら「うん」と頷いた。
「マジで!? じゃあ俺らも残る!」
彼らは鞄を下ろすと私たちのいる方へ歩いてきた。
「ちょっとちょっと」
ポキくんが抗議するように声を上げる。
「完全にA目当てじゃん」
私目当て? と、彼の言葉に首を傾げてしまう。
「悪いかよ! おまえもだろ!」
「お、俺は違うし!」
ポキくんは慌てて否定した。
今教室に飛び込んできた男子たちからはいつも、遠目に視線を感じていた。
楽しむように口元に笑みを浮かべながら、何かを囁きあっている様子も見たことがあるので、どちらかと言うと嫌われているのではないかと思っていた。
だからさっきの、私も残るのかという質問に頷くのがちょっと怖かったくらいなのに。
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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2019年9月6日 17時