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#11 ページ11





翌朝、Aは教室に入るなり委員長の席に向かった。

たぶん昨日の報告だ。
俺も席を立つとその輪に加わった。

「委員長、おはよ。昨日百均で色々買ってきたよ」

「俺も行ってきた!」

横から滑り込むようにして言うと、Aは俺の姿を見て驚いたように目を丸くした。

……あ、不審者って思われた?
誤魔化すように、へへっと笑うと「おはよう」と挨拶する。

「おはよ」

Aは、ふふ、と小さく笑って挨拶を返してくれた。

「委員長もおはよ」

「おはよー。 てか俺、ついでかよ!」

委員長の方に向き直って挨拶すると、そんなふうにツッコまれた。

……危ない危ない。

二人きりで話されるのは何とか阻止できた。
気づかれないように、安堵の息をつく。

委員長は真面目な秀才タイプ、というわけではなく、むしろその逆。 髪も茶色だし。

明るくて、皆を引っ張って行ってくれるようなムードメーカー的存在だ。

そんな委員長がモテるのは当たり前。
だからAと二人にさせるわけにはいかなかった。



「二人で行ってきたの?」

「そうだよ」

俺は頷いた。
ちょっと自慢するみたいな表情で。

案の定、委員長は驚いた顔をしていた。
理由は簡単。 Aが高嶺の花子さんだから。
昨日の朝、皆がびっくりしていたのと同じ。

「え、付き合ってんの?」

委員長は驚いた顔のまま、俺とAを見比べた。

俺は一瞬、隣を見た。
Aも同じようにこちらを見た。

急激に心拍数が上がる。

自分が匂わせたんだからそう思われるのは当然なのに、俺が一番戸惑った。

「違う違う! 手伝ってくれただけだよ」

Aは笑いながら首を横に振った。
委員長は「そうなの?」と俺を一瞥する。

頷くべきだ。 分かってる。
でも、そうしなきゃ駄目……?

困ったように眉を下げ、何とか同じ調子で笑う俺に、委員長は何かを思いついたような顔になった。

にやりと笑った彼が俺の肩を小突いてくる。
がんばれ、とその唇が動いた。
俺は勢いよく頷く。 ありがとう、委員長。

「……それで、予算余らせてるから何か足りなかったらまた言って」

俺たちの様子を見ていたAは首を傾げ、それから話を戻した。

「あ、おっけーおっけー。 本当にありがとね」

委員長に感謝されたAは、どこか照れくさそうに頷いた。

(おい! 裏切り者!)

二人とも深い意味はないと思うけれど、今のはひどい。

俺は拳を握り締め、思いっ切り委員長を睨んでやった。



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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2019年9月6日 17時

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