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翌朝、Aは教室に入るなり委員長の席に向かった。
たぶん昨日の報告だ。
俺も席を立つとその輪に加わった。
「委員長、おはよ。昨日百均で色々買ってきたよ」
「俺も行ってきた!」
横から滑り込むようにして言うと、Aは俺の姿を見て驚いたように目を丸くした。
……あ、不審者って思われた?
誤魔化すように、へへっと笑うと「おはよう」と挨拶する。
「おはよ」
Aは、ふふ、と小さく笑って挨拶を返してくれた。
「委員長もおはよ」
「おはよー。 てか俺、ついでかよ!」
委員長の方に向き直って挨拶すると、そんなふうにツッコまれた。
……危ない危ない。
二人きりで話されるのは何とか阻止できた。
気づかれないように、安堵の息をつく。
委員長は真面目な秀才タイプ、というわけではなく、むしろその逆。 髪も茶色だし。
明るくて、皆を引っ張って行ってくれるようなムードメーカー的存在だ。
そんな委員長がモテるのは当たり前。
だからAと二人にさせるわけにはいかなかった。
「二人で行ってきたの?」
「そうだよ」
俺は頷いた。
ちょっと自慢するみたいな表情で。
案の定、委員長は驚いた顔をしていた。
理由は簡単。 Aが高嶺の花子さんだから。
昨日の朝、皆がびっくりしていたのと同じ。
「え、付き合ってんの?」
委員長は驚いた顔のまま、俺とAを見比べた。
俺は一瞬、隣を見た。
Aも同じようにこちらを見た。
急激に心拍数が上がる。
自分が匂わせたんだからそう思われるのは当然なのに、俺が一番戸惑った。
「違う違う! 手伝ってくれただけだよ」
Aは笑いながら首を横に振った。
委員長は「そうなの?」と俺を一瞥する。
頷くべきだ。 分かってる。
でも、そうしなきゃ駄目……?
困ったように眉を下げ、何とか同じ調子で笑う俺に、委員長は何かを思いついたような顔になった。
にやりと笑った彼が俺の肩を小突いてくる。
がんばれ、とその唇が動いた。
俺は勢いよく頷く。 ありがとう、委員長。
「……それで、予算余らせてるから何か足りなかったらまた言って」
俺たちの様子を見ていたAは首を傾げ、それから話を戻した。
「あ、おっけーおっけー。 本当にありがとね」
委員長に感謝されたAは、どこか照れくさそうに頷いた。
(おい! 裏切り者!)
二人とも深い意味はないと思うけれど、今のはひどい。
俺は拳を握り締め、思いっ切り委員長を睨んでやった。
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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2019年9月6日 17時