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今度は打って変わって
真剣そうな声音だった。
それが少し、昨日のそら君と重なる。
「それって、どういう─────」
『とにかく！
AはAのままでいい。
誰にも遠慮しないで、
好きなら好きって、言っていいんだからね』
“どういう意味”と訊くことは
阻まれてしまった。
『話、聞いてくれてありがと。
何かスッキリしたよ！』
「本当？
何も気の利いたこと言えなくてごめん」
『ううん、聞いてくれただけで嬉しい』
彼女の声は笑っていた。
確かに、最初よりも明るく聞こえる。
じゃあね。
そう言って電話は切れる。
ふと顔を上げると目線の先に
そら君が歩いてきていた。
彼は私を見つけると、
嬉しそうに笑って手を振ってくれる。
私も、小さく振り返すと立ち上がった。
「ごめん、遅くなって」
「ううん！
時間決めてなかったし私が早過ぎただけだよ」
目の前に来た彼に、
「遅くなってごめん」と紙袋を差し出す。
そら君は中身を覗いて
「あぁ、Tシャツ」と呟いた後、
「全然いいよ」
とやっぱり笑顔を向けてくれた。
「ありがとう」
私も微笑むように笑って、
再び縁に腰掛ける。
隣に彼も腰を下ろした。
「で、昨日の話だけど」
そら君は早速本題に入った。
俺さ、と彼は言う。
「─────好きな人が、出来た」
照れたような声と。
頬が少しだけ赤くなった横顔。
その横顔が
何かを決心したように息をつき
そら君は立ち上がる。
そしてそのまま私の正面に立った。
そんなそら君の、
あまりに真っ直ぐな目に息が止まる。
そうじゃ、ないといい。
勘違いの自惚れだといい。
今は。
今、だけは─────
「俺は、Aのことが好き」
ずっと、夢見ていた言葉。
何度もやめようとして
それでもやっぱり消えなくて。
ずっと。
ずっと。
心の底で望んでいた言葉。
『これからさ……
そら君に何を言われても、
私のことは気にしないでね』
「え、と……」
小さく言いかけた。
答えて欲しい、と
黒い瞳が求めてくる。
『何で、そらなの？
何で……俺じゃ駄目なの？』
『Aが好きになったのが、
俺だったらよかったのに─────』
『俺が何とも思ってない奴と、
こんなに一緒にいるわけねえじゃん』
『好きだよ。
─────本当に、俺はAが好き』
何で今思い出しちゃうんだろう。
エイジなんて、ムカつく奴なのに。
でも、あの時の表情は
鮮明に脳裏に焼き付いている。
泣きそうなほど切なくて。
だけど何で。
何で今なの─────？
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2017年3月26日 7時
