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#38 ページ38
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「エイちゃん？
ねぇ、エイちゃん！」
何を言っても彼は無言。
でも。
見つめるその目が一瞬揺らいで、
ゆっくりと口を開いた。
「“どうして？”とか……、
それ本気で言ってる？」
まるで挑発するような表情。
(どういう意味？)
身動きがとれなくて、
変に心臓がバクバクと跳ねて、
どうしたらいいのか分からなくなる。
「今まで本当に気付かなかった？」
エイジが更に迫ってくる。
また、あの日を繰り返すのかと
私は必死で顔を背けていた。
頬にかかる熱っぽい吐息が擽ったい。
雨に濡れた赤い髪は
いくつかの房になっていて、
そんな隙間から覗く目は
艶やかで妖しかった。
でも、そんな見た目とは裏腹に
彼は本当にピュアで真っ直ぐで。
(それは、もう……よく分かってる)
「俺が何とも思ってない奴と、
こんなに一緒にいるわけねえじゃん」
一瞬だけ、表情を歪めて儚く笑う。
それはどこか、
“諦め”を含んでいるようにも見えた。
「好きだよ。
─────本当に、俺はAが好き」
告げられた想いに、
“好き”という言葉に、
思わず背けていた顔を戻す。
「Aがそらのことを好きでも、
それでも俺はAが好き。
報われるとか報われないとか
そんなん抜きでも。……本当に」
彼の気持ちは痛いほどわかる。
私も、そら君に対して
同じ気持ちだったからだ。
だから無下に
ごめん、なんて突き放せない─────。
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2017年3月26日 7時
