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知らない番号。
画面には名前が表示されていない。
それは、電話帳に登録されていない、
ということを示している。
少し、不安に思いつつも
“応答”をタップしてみる。
「もしもし」
小さな声でそう言うと、
『もしもし！
良かった、出てくれて』
電話口の向こうでは
男の人の声がした。
(この声は……)
「もしかして、そら君？」
何でだろう。
電話番号やメールアドレスは勿論、
LINEすらも交換していないのに。
『そう！ 俺、そらだよ！
あのー……番号はね、エイちゃんに聞いた。
ごめんね、勝手なことして』
(え、エイちゃん!?)
私、電話番号も交換したっけ？
あの日、出逢ったあの日に。
しかし、ということは、したんだろうな……。
また、自分自身に嫌気がさした。
(ううん、)
でもそんな自分だからこそ今がある。
まさか、
そら君から電話が掛かってくるということに
繋がるとは夢にも思わなかったけれど。
「全然！ 嬉しいよ！」
『そ……？ なら良かった』
そら君の笑う声が耳元で響く。
そのたびに心臓が跳ねた。
そら君、を意識するほど
こびりついた記憶は濃くなる。
「あの、どうしたの？」
わざわざエイジに番号を聞いてまで
電話を掛けてくる用って一体、何が？
『用ってほどでもないんだけどね。
その……あのね、食堂でのあれなんだけど』
言葉自体はぼかされているけど
何を指しているのかは明確だ。
「……うん」
『あれは、その、
俺が望んだことじゃなくて……っていうか
何て言うか、あのさ！』
「……？」
言葉を挟まず黙って聞いていると
間を開けてからそら君は言った。
『俺、紗奈と別れたんだ』
それは、まるで。
まるであの日に、
キミに彼女がいると聞かされたときと
同じような感覚だった。
「別、れた……？」
そら君の、頷くような息が聞こえる。
「な、何で？」
状況的には
嬉しいこと……なのかもしれない。
でも、二人が、
仲睦まじいカップルだったからこそ
彼女が私の親友だからこそ
そうなんだ、とは頷けない。
『それは』
そら君の次の言葉を待つ─────。
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2017年3月26日 7時
