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「私、甘いもの大好きだし！」
ナイフで切ったパンケーキを
ぱくりと口に運んだ。
「知ってる」
と、エイジは苺をつまんで食べてしまう。
「あー！ 楽しみにとっておいたのに」
そう抗議すると彼は、
べーっと舌を出して笑う。
(あ……)
笑った。
良かった、いつも通りだ。
一人、安堵していると。
「ふぅーん。 そらを見てたんだ」
なんてエイジは言った。
「ん？ え？ 違うけど！」
捲し立てるように言って
パンケーキを再び口に運ぶ。
「いい加減気付けよー。
俺に嘘は効かないって、特にAは」
「何で私？」
「……。 下手だもん」
エイジは目を逸らす。
(何、その微妙な感じは)
その態度はよく分からないけれど
確かにエイジには嘘は通用しない。
それはもう、痛いほどわかっていた。
「！」
ふと顔を擡げたとき、
息が止まった。
パンケーキが詰まったわけじゃなくて。
でも、そっちの方が
よっぽど良かったけれど。
瞬きも出来ずに、
ただその光景を呆然と見つめる。
カシャン、と
手からフォークが滑り落ちた。
(あれ、って)
キス。
キスだよね？
(……っ)
見たくない。
早く、目を逸らしたい。
─────筈なのに、
親友がそら君にキスをしている、
そんな光景に釘付けになっていた。
「あーあ」
エイジの声が、
どこか遠くで聞こえる。
何事もなかった風に、
笑うことが出来たらどんなに良かったか。
でも私はそんなに器用じゃない。
そんな、余裕なんてない。
落ちたフォークを拾うことも出来ず
その場に固まっていると。
突然、エイジが私の手首を掴む。
「……え？」
戸惑いを隠せないまま彼を見ると
そのまま椅子から立ち上がり歩いていく。
「ちょ……っ」
混乱したまま振り向いた先で、
唇を離し、驚いたような表情のキミと
─────目が合う。
「A……!?」
そら君の声が背中に届く。
でも、
腕を振りほどくことは出来なかった。
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2017年3月26日 7時
