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「いぇーい！ 私の勝ち」
「いやいやハンデあり過ぎだろ！」
「負けたあなたはジュース奢りです」
「はぁー!? ……まぁ、いいけど」
「本当？ やったー！」
階段を上りながら、そんな会話を交わす。
彼らの部屋がどこか分からないので
エイジの後ろをついて行きながら。
「ここ」
立ち止まったエイジが鍵を開けて
ドアを開ける。
「お邪魔しまーす」
視界に飛び込んできたのは
動画で見たことのある風景。
それに内心テンションが上がる。
だけど咋に表に出さないようにしながら
濡れた靴を脱いだ。
「あ、ごめん。
靴下も湿ってるんだけど、どうしよ」
「裸足になっていいよ。
俺、風呂入れてくるから待ってて」
「わかった、ありがと」
私は脱いだ靴下を手に、
リビングへと上がらせて貰った。
(わぁ……)
男性四人で暮らしているとは思えないほど
綺麗に片付いていて
アバンティーズらしいな、と思わず微笑む。
でも時々、部屋の隅っこに
脱ぎ捨てられたTシャツがあったりして
やっぱりそこは男なんだな、と思う。
と、エイジが戻ってきた。
「風呂出たらとりあえずこれ着なよ」
「ぉ、わっ」
投げ渡されたそれを何とか受け取って
広げてみると、大きめのTシャツだった。
背の低い私には一枚でも充分、
ワンピースとして着られる丈だ。
(ん？ 何か見覚えある)
Tシャツのデザインに既視感を覚える。
動画で誰か、着ていたような。
「喜んでよ。それ、そらのだから」
エイジがにやりと口角を上げる。
「やっぱり！」
思ったより大きな声が出てしまい、
驚いた彼が目を丸くしたあと
「やっぱり、って」と笑った。
揶揄うような上目遣いで
「どんだけそらのこと見てんの」
と言いながら、ソファに座る。
「そ、そんなんじゃないし！」
慌ててそう否定しながら
私はエイジと間を開けてソファに腰掛けた。
窓に当たる雨の音だけが
静寂を支配する。
「何かさ、」
エイジがふと窓の外に視線をやる。
「最近、雨多いよね」
彼の声に呼応するように
雨音が強くなった。
「……そうだね」
何でだろう。
梅雨でもないのに
やたらと雨が多いのは。
いつも─────
私の心と、気持ちと、想いと、
リンクするように雨が降る。
雨が、想いを運ぶ。
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2017年3月26日 7時
