#13 ページ13
♢
「何って、なに？」
俺は食い下がった。
そろそろ本当に、進展が欲しいところだ。
良いものでも悪いものでも。
「いや、Aは違うじゃん」
と、そら。 何がどう違うんだか。
“可愛い”って、言ってたくせに。
「何で？」
「だって、友だちだし」
そらは言うと「ね」とAに同意を求めた。
Aは曖昧に頷く。 弱々しい笑顔だった。
「今は友だちでも、後々さぁ……」
「いやー、たぶんないよ」
相変わらず困ったように笑うそら。
そっとAを窺うと、消え入りそうな笑顔で俯いていた。
……ごめん、A。
手助けするつもりだったのに、俺が傷つけてしまったみたいだ。
そらはそんなこととは露知らず、一人暢気に食事を続けている。
そして食べ終わると、お盆を持って立ち上がった。
「じゃ！ ありがとね、二人とも」
何に対する礼かよく分からない。
一緒に飯食ったことか？
「早いね」
若干の皮肉を込めて言う。
気づいてか気づかずか、屈託のない笑顔のそら。
「そう？ ちょっと急いだ。 講義あるから」
「……あー、そう」
無愛想に答えて視線を逸らした。
……何か、そらを見ていると自分が小さく思える。
「じゃあ今度こそ。 またね」
手を振るそらに、かろうじて応えられた様子のA。
終始にこやかに、彼は去って行った。
二人で横並びも不自然なので、俺はテーブルの上のお盆をスライドさせてから、彼女の正面に座り直した。
「どうせぶりっ子すんなら、徹底しろよな」
そらに何を言われても、せめて本人の前では平静を保っているとか。
感情の起伏を表に出さないとか。
笑顔の仮面、そんな簡単に剥がれるようになっちゃったの？
「……分かってるよ」
「分かってない」
間髪入れずに否定した俺を一瞬だけ見て、また俯くA。
言い合う気力もないって感じか。
……まあ、そうだよな。
好きな人に面と向かって“ない”とか言われたら。
彼女は内心、どれほど傷ついているか。
その引き金は、俺が引いてしまった。
口を噤んだまま、箸を持った。
ほとんど冷めて伸びたラーメンを食べ進める。
「……私ね、思っちゃったんだよ」
ぽつりと呟くようにAが言った。
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2019年9月28日 19時
