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会話を聞かれないようにそらから離れ、背を向ける。
笑顔を消して、不機嫌さを顕にした。
「何しに来たの?」
私の変化に「怖っ」とエイジが大げさに驚くフリをする。
「邪魔しないでっていつも言ってんじゃん!」
「邪魔なんかしてないし」
じゃあ一体どういうつもりなのだと大声で問いたい。
でも、駄目だ。 そらが見てる。
私はぐっと堪えてエイジを睨みつけた。
「空気読んでよ!」
悔しいけれど、彼は察しが良い方で、勘も鋭い。
だから絶対に、こうして邪魔しに来るのはわざとなのだ。
それで私が怒るのを見て、楽しんでいるドS。
「え、いいの? 俺にそんなこと言って」
不意にエイジの顔に意地悪な笑みが浮かんだ。
「そらに言っちゃうよ?
Aが本当は性格悪くて計算高いぶりっ子だって」
「ちょっ、ちょちょちょっと……!」
急に声を張り上げたエイジの口を慌てて塞ぐ。
そらを振り返ると、幸い彼には聞こえていなかったようで、首を傾げている。
ホッと胸を撫で下ろし、エイジを見た。
彼の意地悪そうな笑みが深まる。 完全に楽しんでる。
「どうする?」
(この悪魔!)
内心そんなふうに毒づき、きゅっと唇を噛み締めた。
「ああもう、分かったよ!」
何でこんなヤツに弱味を握られているのか。
もう一度、エイジを睨んでみたけれど、彼は全然怯まない。
どころか、笑い返してくる始末。
……敵わない。 もう知らない!
エイジのことなんか気にしないでおこう。
「ごめんね!」
ふい、とエイジから顔を逸らして離れると最初のようにそらに駆け寄った。
「ううん」と、そらは首を横に振る。
「内緒話? 俺も混ぜてよ」
「駄目駄目。エイジの話聞いたら耳が汚れちゃう」
と笑った私の声は、彼には聞こえていないと思っていたのに、あの悪魔はちゃんと聞いていたようだ。
「あ。ねぇ、そら。
Aって本当はさ────」
「あぁぁー!」
私はエイジの声をかき消すように声を張ると、先ほどみたく口を塞いでやった。
(余計なことを!)
と、目で訴えてみても、エイジは楽しそうに笑っている。
「ごめんごめん、何でもない」
身長の高い彼は私の手をひらりと躱してそらに言った。
そらはきょとんとしていたが、やがて小さく笑う。
(あ……)
しまった。
彼を蚊帳の外に置いてしまっていた。
私はエイジの方へ伸ばしていた両腕を慌てて下ろし、背伸びしていた踵を地面につけた。
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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2019年9月28日 19時