【YouTuber/実況者】君を想えば想うほど【短編集】

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(私も言い過ぎたけど……、けど！)

踵を返し私も自室に戻った。
泣きそうな気持ちで荷物をまとめる。

何がこんなに悔しいんだろう。

分かんない。 もう頭の中がぐちゃぐちゃだ。

でも何かが、ぷつりと切れてしまったのだ。

バタン、と部屋の扉を閉めて玄関の方へ向かう。

「A!? ちょ、待ってって！ どこ行くん!?」

その音を聞きつけたななくんが自室から飛び出してきた。

答えないまま、正確には堪えた涙で息苦しくて答えられないまま、玄関のドアノブに手をかける。

「A!!」

「離して……っ」

掴まれた腕を振りほどいた。

滲んだ視界で見上げたななくんの顔には困惑と動揺が浮かんでいる。

「もう邪魔なんでしょ、私なんて！
誕生日も忘れるくらいどうでもいいんでしょ！
配信の方が大事なんでしょ！」

気持ちが高ぶって、ぽろぽろと涙がこぼれ落ちた。

苦しい。 痛い。
心が圧迫されて、とてつもなく。

「違う。 それは違う。 そんなわけないやろ。
俺がどんだけAのこと大事に思ってるか」

「いい、もういい……っ」



私はそのまま家を飛び出し、戻らないまま月日が流れた。
ななくんとはそれきりだ。

お互いに、相手を分かっているつもりだったけれど結局何も分かっていなかったのだ。

私も限界だったんだと思う。
募りに募った不満が爆発してしまった。

彼が配信を優先しなきゃいけないときもあるのは、立場上仕方がないことなのに。

何も分かろうとしなかった。

私の気持ちばかりを押し付けて、自分で自分を責めることで己の過失を見なかったことにしていた。

(……ななくん、どうしてるんだろう)

嫌いになんてなれなかった。
一日たりとも忘れた日はなかった。

────あれから今日で一年が経つ。



「！」

スマホが震えた。
表示された名前に息を呑む。



ななくん誕生日おめでと!



思わず涙がこぼれた。
あの日とは違う、あたたかい涙。

離れていた間、平気なフリをして諦めたつもりでいたけれど、本当はずっと待っていた。

最後にひどい態度をとってしまったことが引っ掛かっていて、後戻りする一歩を踏み出せないでいた。

自己中心的でわがままな別れ方をしてしまったから、嫌われて当然のはずだったのに。

それでももし叶うのならば、もう一度私を────。

涙を拭い、電話をかける。
彼は直ぐに出てくれた。

「ななくん、あのね……っ」

あの日言えなかった言葉と、ずっと心に抱えてきたありったけの想いを伝えたい。

……まだ、間に合うかな。



─Fin─

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