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「この中で遊びで人狼ゲームやったことある人は?」
エイジくんが皆を見回して尋ねる。
ぶんけいくん、トミーくんが手を挙げ、一拍遅れてマホトくんも手を挙げた。
「友だちがハマってて……」
マホトくんが居心地悪そうに言った。
「俺も、学校で何回かやった程度」
と、トミーくんも続く。
「何回かそういうイベントに誘われて」
ぶんけいくんは相変わらずジュースを飲みながら言った。
皆、こんな“命懸け”のものじゃなく、遊びとしてやっただけのようだ。
「……それで」とエイジくんは話題を変えた。
「どうやって村人側が勝つか」
「ねぇ、出来れば預言者確認したい」
あーずーが意見する。
預言者……って誰か1人を占って、人狼かそうでないかが分かる役職、だったっけ。
「それはどうして?」
と、カンタくん。
「重要な役職だから、間違って投票しないように」
「あとは、夜に用心棒に守ってもらえる」
彼の問いにはトミーくんとマホトくんが答えた。
なるほど、と1人納得する。
その反面、心がざわざわしていた。
だってやっぱり、こんなゲームやりたくない。
「共有者も1人は名乗り出て」
そんな私の心の内をまったく無視する形で再びあーずーが言った。
共有者、って何だっけ?
……あ、お互いに村人だと分かっている2人1組のあれか。
「……」
場に沈黙が訪れた。
誰も何も言葉を発さない。
それでも目だけは鋭く、互いの動向を窺っている。
ぴりぴりと張り詰めた空気に触れて、ちょっと息苦しかった。
「はい」
と、ややあって1人の手が挙がった。
ぶんけいくんだ。
皆が彼に注目する。
「共有者?」
エイジくんが尋ねる。
「ううん、預言者」
彼はさも当然のように言った。
誰からも反論は出ない。
それから、そらくんが気だるげに手を挙げた。
「俺が共有者」
*
自己紹介や役職のカミングアウトを済ませると、投票までとりあえず解散という流れになった。
食堂を出ようとしたところ、あーずーに声をかけられた。
「ねぇ、ちょっといいかな?」
彼女は他にマホトくんにも声をかけていた。
私と彼が彼女についていくと、廊下に設置されたソファーのところで立ち止まった。
マホトくんはそれに腰かけ、私はその正面に立つ。
あーずーは何か考えるようにその場を行ったり来たりしていた。
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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2019年8月15日 23時