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「……」
「……」
私とポキくんは無言で目を合わせた。
お互い、とても不安そうな表情をしていたと思う。
「エイちゃん、どこだよ……!?」
そらくんは明らかに落ち着きがない様子で、出入口の方を何度も見ている。
「ここにいないってことは、別の場所で首輪が締まってる」
妙に嬉しそうなぶんけいくんが言う。
「ふざけんなよ！」
そんな彼にそらくんが噛みつく。
彼は睨みつけるが、ぶんけいくんは当然のように聞き流して続けた。
「だったら、投票は投票でしないとだよね」
それを聞いたはじめくんがそろそろと立ち上がる。
焦り、狼狽えたような視線をぶんけいくんに注ぐ。
「ねぇ……あいつどっちなの？ 本物？偽物？」
ぶんけいくんはその問いかけに直接答えない。
「黒が確定してる相手が1人おるやん」
そうだ。ぶんけいくんはポキくんに、この場にいないエイジくんは陸くんに黒出ししていた。
ポキくんと陸くんの間で忙しなく視線を往復させてしまう。
どちらか……。
なんて一応考えるものの、心は決まっている気がする。
「ねぇ。ポッキー、人狼だよね？
もうおまえしかいない！皆、今夜はこの人に投票」
ポキくんの肩を揺さぶった後、皆に向き直って言う陸くん。
そのときだった。
窓の外からなにか、笑い声が聞こえてきた。
……聞き覚えがある。
ちょうど今日の昼前にも、厨房で同じ笑い声を聞いた。
「何……？」
困惑したようなはじめくんの声。
皆が窓の方に駆け寄った。
建物の外で車のエンジンの始動音が響いた。
それは風の音や虫の鳴き声を圧倒して、信じられないくらい大きく、はっきりと、私たちの耳を打った。
続いてタイヤが砂利を散らす音、アスファルトに擦れる音が聞こえてきた。
車が、あったんだ……。
屋上からも見えない場所に停められていたということだ。
窓の外の夜の闇を、ヘッドライトの光が横切った。
車の走行音がそれに続く。
眩しいオレンジの光に照らされて浮かび上がる人影。
「エイちゃん!?」
そらくんが叫ぶ。
外にいるエイジくんの目が、物凄いスピードで迫ってくる車を捉え、見開かれる。
瞬きも忘れて、私たちはその瞬間を見た。
何か重たいもの同士がぶつかるような音が響き渡って、路上にいたエイジくんの姿が消えた。
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2019年8月15日 23時
