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皆が腕を下ろす。
私も一拍遅れて下ろした。
「何で……」
カンタくんの声は消え入りそうなほど小さい。
恐怖に顔を歪め、肩を震わせている。
「なんでだよ!」
ピピッ、と彼の首輪が鳴った。
虫の羽音みたいなモーター音とともに、カンタくんの首輪が締まり始める。
彼は床に倒れ込むと、叫びながらのたうち回っていた。
彼の虚ろな目が私を捉える。
苦しい。 私も、自分の首輪が締まっているような気がした。
涙に霞んでよく見えないのに、ひどく責められているように思えて、恐ろしい。
「ごめん……ごめん、なさい……!」
私はその場に座り込むと、声を上げて泣いた。
*
夜の薄暗い厨房に、私たちは再び集まった。
エイジくんはポキくんに見張り役になるよう命じ、厨房から追い出した。
私は未だ涙が収まらない。
すすり泣きながらヤスリを手に立ちすくむ。
横にいるエイジくんはポキくんよりも身長が高い。
彼は何も言わず、その場にしゃがんだ。
早くしなきゃ……。 時間がない。
私は床に膝をつくと、彼の首輪を摘んでヤスリを当てる。
それを何度も前後に動かし、首輪を削っていく。
「……」
首輪の銀色の輝きを目にすると、それだけで直前に死んだカンタくんの目が思い出されてしまう。
「大丈夫?」
エイジくんが訊いてくる。
勿論、大丈夫じゃない。
彼は私を気遣ってくれているわけじゃない。
「集中してよ。 俺だけがお前らを救える」
思わず手に力が入った。
私はヤスリを彼の首輪からわずかに離した。
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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2019年8月15日 23時