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「残念だけど、やるしかない……」
陸くんが言った。
彼の言う通りだ。やるしかない。
私は脱出の可能性を得た。
だけど、まだ首輪は切断出来ていない。
今夜は誰かに投票するしかない。
「……っ」
私は口を噤んだ。 あまりにも無力だった。
「そらと、そっちの奴。
2人の関係においては、お前の論理は成立しない」
そらくんとさぁやちゃんを順番に指して、とても冷静に、エイジくんが言ってのけた。
冷たい笑みを含んだ目で、あーずーを見据えている。
「何で」
彼女は戸惑ったようにエイジくんを見る。
彼は「そら」と呼びかけた。
「あいつの役職を言え」
さぁやちゃんが俯いていた顔をわずかに上げる。
そらくんは彼の言葉に目を丸くし、エイジくんとさぁやちゃんを見比べる。
そののち、ぽつりと言った。
「……俺と同じ、共有者ってやつ」
誘拐犯の思い通りにはなりたくない、まともにゲームをする気なんてない、とは、思っていた。
だけど、さすがに驚いてしまった。
さぁやちゃんがもう一人の共有者だったのだ。
だけど当初の話では、2人目の共有者はオープンにしない方が良い、って。
今回は一人だけカミングアウトする、って、そういう戦法をとったはずだった。
さぁやちゃんも同じことを考えたらしく、そらくんの顔をまじまじと見ている。
「何で言うの?」
そらくんはエイジくんの顔色を窺う。
「あらぬ疑いをかけられたんだから、仕方ない」
そのエイジくんはこともなげに言い放った。
「仮にこの2人の間に行き違いがあったとしても、その一方が人狼だ、ってことにはならない。
2人は共有者。 お互いに相手が村人側だと知ってる」
「でもまぁ、ある意味」
ぶんけいくんがあーずーに言った。
「あーずーの推測は正しかったことになるね。
相手が人狼やないっていう確信がない限り、下手なことは出来ない」
思わず私はポキくんの方を見てしまった。
彼は、私が人狼じゃないことを知っていた?
だから大胆な行動に出られた?
……つまり、彼は人狼ということ?
私の視線に気づき、私が考えていることを察して、ポキくんが慌てて首を横に振る。
あーずーは愕然とした表情で、さぁやちゃんに確認した。
「本当なの?」
さぁやちゃんは静かに頷き、苦しげに続ける。
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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2019年8月15日 23時