2-12 ページ28
.
「なら、ポッキーは？」
陸くんが今度はポキくんを指して尋ねた。
「そいつもA襲ってるから。
人狼は、そいつとエイジ。そらは操り人形」
あーずーの推理はそれなりに筋が通っている。
昨日までの私なら、確かにエイジくんとポキくんが人狼かも……なら今日はエイジくんに入れようか。
でも、それだと明日はポキくんに入れなきゃいけないのかな。なんてことを考えていたと思う。
でも、もう駄目だ。
もうそんな次元では考えられない。
「人形って何なんだよ！」
そらくんが言い返そうとするけれど、上手く言葉が出てこない様子だ。
基本的に議論は苦手みたい。
「ひどい言いがかりだ」
と、静かにエイジくんが言う。
「なら反論してみてよ」
あーずーはそう言うと、私とさぁやちゃんの方へ叩きつけるように指を突きつけてきた。
「何でこの子たちにひどいこと出来たわけ!?」
限界だった。 これ以上聞いていられない。
「私は！」
椅子から立ち上がる。
「出来れば、もうこんな議論はしたくない。
だって、人狼だって本当は悪い人間じゃない。
ただそのカードを配られただけで」
ポキくんと私は監視カメラの死角を見つけたのだ。
そこで首輪を切れるかもしれない。
そうしたら、絞め殺されることなく逃げ出して、助けを呼びに行けるかもしれない。
なのに大真面目に、誘拐犯たちの命じるままに、こんな狂ったゲームを続けるなんてあまりにも馬鹿げている。
「急に何？」
はじめくんが困惑した表情を向けてくる。
「悪いのは誘拐犯でしょ？」
私は言った。 止められなかった。
「そいつらをどうやってやっつけるか、どうやってここを出るか、それを考えるべきだよ！」
そのとき、ポキくんと目が合った。
彼の目には焦りが滲んでいる。
……分かっている。こんな発言はするべきじゃない。
誘拐犯から怪しまれ、警戒されるだけだ。
陸くんが小さくため息をついた。
「正論だけど、今は時間がない。
誰かに投票しないと、皆死ぬ……」
「それとも何？ 勝ち負けは無視して死んでも良さそうな奴に入れる？」
はじめくんがせせら笑い、そらくんを指した。
「そいつとか」
「そんなこと許されるわけねぇだろ！」
そらくんは即座に彼に噛み付く。
私が言ったのは、そういう意味じゃない。
ただ勝負を放棄したいわけじゃない。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 370人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2019年8月15日 23時
