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「ゲーム？」
私の声は異様な静けさに飲まれた。
離れた位置にいた人たちが吸われるようにテレビに近寄る。
【建物から外へ逃げてはいけません。
他人に危害を加えてはいけません。
違反した場合、処刑されます。】
「処刑って……どういうこと？」
「死ぬんだよ。 殺されるの！」
困惑を隠せない様子の男子に彼は答えた。
私も状況が分からない。このテレビに表示される言葉の意味も、理解出来ない。
彼が何を言っているのかも分からない。
それでも、今は疑問は後回しにして受け入れるしかないように思えた。
そうしなければいけないような圧を感じていた。
【皆さんは村人ですが、人狼が3人紛れています。】
画面は私たちの反応をいちいち待っていてはくれない。
立ち止まっていることを許さない。
テレビは【構成】と続けた。
【人狼側：人狼 3人、狂人1人
村人側：預言者1人、霊媒師1人、用心棒1人、共有者2人、村人3人】
「……人狼ゲームだ」
誰かが呟いた。
人狼ゲーム、という名前自体は私も聞いたことがある。
ただ、それがどんなゲームなのかは知らない。
「人狼ゲーム？」
赤い髪の彼が聞き返すも、“人狼ゲーム”という名前を出した彼は答えることなく画面に視線を戻した。
【各自の正体はカードに書かれています。
他人のカードを見てはいけません。
他人に自分のカードを見せてはいけません。】
何人かが弾かれたように動いた。
自分の制服のポケットを漁り始める。
私も立ち上がるとスカートのポケットに手を入れた。
あった────。
確かに、カードが入っている。 いつの間に……。
考えるだけ野暮だ。
私たちが意識を失っている間に入れたに決まっている。
代わりに、スマホなど他の所持品はすべて抜かれていた。
皆が各々カードを確認した。
私も自分のカードを見つめる。
「何なんだよ……。
人狼ゲームだか何だか知んないけど、この茶番は！」
怒鳴り声が響く。
赤い髪の男子と同じ制服を身につけた男子がその怒りの勢いのまま近くにあった椅子を蹴飛ばす。
その椅子が私の方へ飛んできて、慌てて退いた。
「帰ろうぜ」
彼は赤い髪の男子にそう声をかけ、部屋の出入口である扉に向かって歩いて行く。
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2019年8月15日 23時
