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ハッとして目を開けると、視界が明るかった。
朝だ────。

見慣れない景色に若干戸惑い、命懸けのゲームの最中だったことを思い出す。

私は随分うなされていたようで、汗で額に前髪が張り付いて気持ちが悪かった。
ブラウスの背中の部分も湿っている。

小さく息をついて身を起こすとベッドから下りた。

部屋の中にあるロッカーから替えの制服を取り出して着替える。
ローファーを履いて扉を開けると廊下に出た。

金色系の長い髪が目に入る。

「さぁやちゃん……?」



彼女は浅い呼吸を繰り返して突っ立っている。

私の声は聞こえていないのか、もしくは反応を示す余裕すらないのか。

彼女に歩み寄ると、その足元に誰かが倒れているのに気がついた。

「!」

息を呑む。 心臓がばくばくとうるさくなる。

倒れていたのはマホトくんだった。
彼はうつ伏せの状態で静かに目を閉じている。

カッターシャツの背中の部分が裂け、そこから赤黒い染みが広がっていた。
その染みは脇腹を伝い、床を濡らしていた。



廊下の各方向から複数の足音が近づいてくる。

「あー……皆、寝られた? あんな硬いベッド」

ぶんけいくんの能天気すぎる声。
血まみれのマホトくんを見下ろすとさすがに真剣そうな表情を浮かべている。

全員が床の惨状に目を留め、ぎょっとした様子で足を止めた。

それからカンタくんがさぁやちゃんに問う。

「これ……君が?」

君がやったのか?という意味だ。
彼女は小さく首を横に振る。

この場に圧倒されて激しく否定するエネルギーすら湧いてこない様子だ。



「引きずられたっぽいな」

と、エイジくん。
彼はマホトくんとマホトくんの部屋を見比べて続ける。

「本人の部屋からここまで。
誰かが押さえてる間に誰かが背中を刺してる」

「殺され方とかどうだっていいでしょ……。
現時点で人狼は2人以上。 それだけ」

はじめくんが言った。

「どうやって殺したかで人狼の体格を絞れるかも」

「ならやってよ! 早く!」

エイジくんの言葉にはじめくんが噛みつく。

「やめなよ……」

そんな2人を宥めるようにあーずーが言った。
それから倒れている彼に目をやる。

「運んであげよう」

何人かが協力して彼を彼の部屋に運んだ。

彼の部屋の中は荒れていた。
机は大きくずれ、椅子が倒れている。

壁や床にも血が飛んでいた。
抵抗したんだ。……そして、苦しんだ。

ベッドに寝かされたマホトくんに毛布を掛けて、その場を後にした。



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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2019年8月15日 23時

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