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「怪しいで言うならそいつだろ」
続けてエイジくんは言うと、トミーくんを指した。
「は？ 何で俺？」
「他に預言者を名乗る奴はいないか、ってわざわざ念押ししてた。
これは仲間の人狼か狂人に、今からでも預言者のフリをして欲しい、名乗り出て欲しいって頼んでたって取れる」
「ちげぇよ、馬鹿か!?」
トミーくんはエイジくんを睨みつける。
睨まれた側は涼しい顔だ。
「再確認自体はそんなに不自然なことじゃないよ」
と、マホトくん。
エイジくんは聞こえていないフリをしてトミーくんへの攻撃を続けた。
「最初は無口だったのに、急によく喋るじゃん」
彼は挑戦的な笑みを浮かべ、小首を傾げてみせた。
視線はトミーくんの方へ向けられたままだ。
「しかも弱そうな奴を見つけて、場の流れを強引に作ろうとしてた。 ……これは自然？」
「自然だろ！」
トミーくんは勢いよく立ち上がった。
「目が覚めた直後は混乱してたし雰囲気に圧倒されてた。
だから上手く喋れなかったけど、今は……経験者が少ないって分かってからはそりゃ喋った方がいいだろ！」
「経験者の数が少ない、だから場を誘導出来るって考えたの？」
「ふざけんな……。 悪いように言うなよ」
トミーくんの顔には汗が浮かんでいる。
反対にエイジくんは余裕そうな表情。
「いや、自分が思ったことを言ってるだけだけど。
俺は、お前が人狼だと思ってる。
……まぁ、皆は気にしなくていいよ」
というエイジくんの言葉にトミーくんは絶句する。
彼の肩が、硬く握り締めた拳が、細かく震えている。
気にしなくていい、なんてひどい。
皆気にするに決まっている。
今のやり取りを聞いたために、トミーくんに入れよう、と決めた人は多いだろう。
一拍置いてトミーくんが引きつったような、乾いた笑いをこぼした。
「お前が人狼だろ……？」
その指先はエイジくんに向いている。
彼は反論しなかった。
驚いたから、とかそういうわけじゃなく、反論の必要もない、といったような感じだ。
既にトミーくんの吊りを確信しているような。
「……投票の時間」
さぁやちゃんが一見無関心そうな、でも実際は恐怖や混乱や緊張を一生懸命押し殺していると思われる声で言った。
「やっぱりやめよう!?」
と、私は皆に呼びかけたけれどはじめくんが私を、それから皆を見て言う。
「絶対に1人死ぬ。投票しないと全員死ぬよ！」
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2019年8月15日 23時
