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「は……」
あーずーが呆気に取られたように彼を見る。
皆も意意表を突かれていた。 勿論、私も。
「違う……。 何いい加減なこと言ってんの？」
彼女は我を取り戻して、苦笑混じりに否定した。
「俺は村人側としてこのゲームに勝ちたいと思ってる」
エイジくんは相変わらず泰然自若としている。
すぐそばで「ちょっと待って」と陸くんが声を上げた。
「それはさすがに都合が良すぎると思う。
あーずーから散々責められて、そしたら急に預言者を名乗って、あーずーが人狼だとか」
確かに、私もそう思った。
エイジくんの言葉をすぐには受け入れられなかった。
「事実は事実だし」
「事実？ 何が事実よ!?」
エイジくんに間髪入れずに噛み付くあーずー。
「完全に嘘でしょ……。 嘘、嘘じゃん！」
「嘘かどうかは霊媒師が確かめればいい」
そのエイジくんの言葉は、この世界から切り取られたみたいにやけにはっきりと頭の中に響いた。
あーずーが息をのみ、一瞬で蒼白になった。
……そうだ。このゲームには霊媒師という役職が存在する。
「確かに」
カンタくんが震える声で言った。
「今夜あーずーを吊って霊媒師が確かめれば、エイジが本物の預言者か分かる……」
「……ちょっと待ってよ」
呟いたあーずーが勢いよく立ち上がり、さぁやちゃんを指した。
「あんたたちこの子に何したか忘れたの!?
ねぇ、皆考えて……。 ねぇ、考えて！」
輪の中を歩き回り、皆に訴えかける彼女。
皆は彼女と目が合うと、気まずそうに逸らして俯く。
「分かった」
あーずーが小さく呟き、エイジくんを見据える。
「あんた人狼なんでしょ」
「……それも、今夜おまえを吊れば分かる」
エイジくんはポケットに両手を入れて悠々と立っている。
取り乱すあーずーを冷めた目で見つめ返して。
「いや、でもそれって……」
私は思わず割って入った。
「本物の預言者を確認するために、1人を犠牲にするってことでしょ……？ 人の命を」
声が震える。
この張り詰めた空気に押し負けそうになる。
「どのみち1人は死ぬ」
と、はじめくん。
「誰かが必ず死ぬんだぞ！」
エイジくんの厳しい怒鳴り声。
「……っ」
あーずーは肩を震わせ、嗚咽する。
彼女の目から、とめどなく涙があふれている。
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2019年8月15日 23時
