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「でもまぁ、これで投票はやりやすくなったんちゃう?」
ぶんけいくんは言うと立ち上がった。
そらくん、さぁやちゃんを順番に指す。
「共有者。それから白確定」
彼は次に自分を指した。
「で、僕は預言者やし。
昨日2人減って、あとは7人?の中から選ぶだけ」
「ぶんけいが本物なら、ね」
陸くんがノートを閉じた。
ぶんけいくんは肩をすくめて食堂から出て行った。
11時頃、喉が渇いて厨房に向かった。
業務用みたいな大きな冷蔵庫を開けてペットボトル入りの水を取り出す。
近くにあったステンレス製の調理台に腰をもたれかけさせて立ち、ペットボトルの蓋を捻ろうとすると、誰かの足音が聞こえた。
「ポキくん……」
顔を上げると、ちょうどポキくんが厨房に入ってきたところだった。
彼は私の姿に目を留め、ハッと息を呑む。
そのまま視線を床に落とすと立ち去ろうとする彼。
「ちょっと待って!」
思わず引き止めると、ポキくんは立ち止まってくれた。
私たちは、今夜にも命を落とすかもしれない。
「こんなところで偶然会って、びっくりした」
こんなところ、というのは厨房で、って意味ではなくこの地獄のような場所で、ってことだ。
例え自己満足と言われようとも、やっぱり話せるときに話しておきたい。
周りには誰もいないし、良い機会だ。
「……」
彼はこちらを一切見なかったけれど、私の言葉に頷いてくれた。
聞いてくれている。ちゃんと、私の話を。
「話したいことがある」
ペットボトルをぎゅっと握り締めて真っ直ぐ彼を見据える。
「……何?
俺が人狼か村人か、ってこと?」
「違う。 もっと別のこと。
……ポキくんが引っ越す前のこと」
話し始めたことで、また過去の記憶が蘇った。
教室の中。授業と授業の間の休み時間。給食の時間。それから、放課後。
まるで洪水みたいに次から次へと押し寄せてくる。
「あんまり話も出来なかったし、学校とか────」
「気にしてない!」
彼の一際大きな声が私の言葉を遮った。
突然の大声にびくりと肩が揺れる。
「気にしてないよ……」
彼はもう一度、今度は静かに言った。
「……私は、ずっと気になってた。
話したいことがたくさんあった。でも────」
「俺は気にしてないけど」
再びポキくんは私の言葉を遮る。
今度はあくまで落ち着いた様子で。
「……けど?」
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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2019年8月15日 23時