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現れたのは、エイジだった。
「これが恋人陣営ってこと?」
尋ねながら歩み寄ってくるエイジと向かい合って立つ。
間に陸が立ち、彼の言葉に頷いた。
「次の投票、皆で虫眼鏡に入れない?」
エイジが言う。
「何で?」
私が訊くと、彼は答えた。
「手強そうだから。
どうせ最初は運だけだろ?」
「いや、」
エイジに陸が反論する。
「3人、バラバラの相手に入れた方がいいと思う」
私も同感だ。
重なっていると、投票先を合わせたんじゃないか、仲間なんじゃないか、そうやって疑われる可能性が高まる。
「……ねぇ、そもそもあんた村人?」
赤い髪の彼を見据える。
「それとも、人狼?」
*
時間はあっという間に過ぎていった。
8時まで、10分を切っている。
投票場には既に全員が揃っていた。
「この瞬間が最悪ですね」
虫眼鏡が言う。
「投票のこと?」
「第1回目の投票が、です。
預言者はまだ情報を得ていない。
人狼同士の顔合わせも済んでない。
ほぼ運と勘だけの投票になります。
……全く論理的じゃない」
彼の言葉に私も呟く。
「ほぼ運と勘だけで、人が死ぬ……」
何となく漂う空気が張り詰める。
運と勘だけだから、自分が疑われないように、自分が死なないように、皆、発言と行動に細心の注意を払う。
発した一言が、行った仕草が、命取りになることもある。
「あのさ……誰が怪しい、とかある?」
ツリメが皆を見回す。
と、美希さんが立ち上がった。
「マホトが人狼か恋人で決定」
「……ピュアアピールやめろよ」
2人の仲はもう拗れている。険悪だ。
「何言ってんの?」
美希さんが歩み出て、マホトの正面に立った。
「私が本物の霊媒師。ねぇ、嘘言わないでよ!」
彼女の言葉にもマホトは落ち着き払って言い返す。
「よくそんなこと言えるよな。
─────霊媒師は俺だよ」
美希さんが振り向いて全員に訴えかける。
「皆、信じて! 私が霊媒師!」
「もう座れって」
感情的になった彼女をマホトは冷静に宥める。
「俺は─────」
口を閉ざしていたてつやが、1人を指さした。
「こいつが怪しいと思う」
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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2018年3月10日 16時