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「A、恋人でしょ？」
連れてこられた屋上で、開口一番に陸はそう言った。
心臓をぎゅうっと鷲掴みにされたような気がした。
わざと怒ったような表情を作り、振り返って尋ね返す。
「何、全員にカマかけてんの？」
誰がキューピッドなのかを恋人は知らない。
キューピッドの振りをして、全員に個別に声を掛けていけば上手く恋人を釣れるかもしれない。
……そんな手に乗ってたまるか。
陸は私の問いには答えず、続ける。
「“恋人”は……Aとエイジ」
「……！」
信憑性が増した。
当てずっぽうにエイジの名前を出したとは思えない。
さっきのあの短時間でそれを見破ったというのは考えにくいし、先にエイジを騙してカミングアウトさせた可能性なんて、もっと低そうだ。
「キューピッドなんだ、俺」
その一言に、ああ、と思った。
ここまでは予想出来た。
「……それで？」
「だから預言者じゃない。俺が2人を選んだの」
そうだった。
彼は2人いる自称預言者のうちの1人。
「預言者ってのは嘘って、認めるんだ？」
「認める」
陸は迷うことなく頷いた。
自分が嘘をついたと認めた。
恋人は私とエイジだと言い当てた。
たぶん彼は本物のキューピッドだ。
……というか、そう信じて戦う他ない。
「あんたがキューピッドだとして」
陸の方を向いた。
「何で、私とあいつ？」
何で、私とエイジを恋人に選んだのか。
「勘だよ」
陸はそう言って笑った。
(勘……)
勝てるという勘？
……なら、間違ってないな。
「よく分かってないんだけど……私たちの勝利条件って、ゲーム終了までに、とにかく生き残ればいいんだよね」
“恋人”なんて、前回はいなかった。
「ただし……恋人の一方が死ねば、もう一方も死ぬ」
陸は自分の首輪をそっとつまんだ。
「これが絞まるんじゃない？
パートナーが処刑されるか、人狼に襲われるかしたら」
「キューピッドは？」
「ゲームに勝てない以上、同じだと思う。
恋人が死ねば、最後には死ぬ。
キューピッドが死んでも、恋人は死なないけど」
そのとき。
─ガタン
背後で、屋上の扉が開く音がした。
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2018年3月10日 16時
