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あくまでマホトは冷静だった。
取り乱したりはしなかった。
私は立ち上がると、先ほどの陸のようにマホトの正面に立つ。
彼も立ち上がった。
彼が昨晩そうしてくれたみたいに、今度は私がマホトの手を握り締める。
力強く。安心させるみたいに。
戦友を称えるみたいに。
私は涙を流しながら、真っ直ぐその目を見据えた。
彼もまた、同じように私を見つめ返し、昨晩みたく手を握り返してくれた。
そして、直ぐに離すと、私の背後のテレビの方へ歩いていく。
特に意味はないだろう。
ただ、泣き顔を、死にゆく様を、見られたくないのかもしれない。
─ウィィーン
虫の羽音みたいなモーター音が2つ。
マホトと、リクヲの首輪から。
2人は首輪を押さえながら床に頽れ、暫く苦しみ喘いでいたがやがてすぐに死んだ。
【勝利した側には合計1億円をお支払い致します】
「勝った……。 勝った……！」
エイジが立ち上がり、泣きながら、笑った。
首輪がモーター音とは別の音を出し解除される。
私はそれを引きちぎるようにして外した。
そのまま床に捨てる。
これでもう……“ルール”には殺されない。
*
私はエイジとともに屋上に出た。
柵のない屋上で、私たちは縁の手前に立っていた。
彼は夜の空を仰いでいる。
山奥にある建物だからか、星が綺麗に輝いていた。
「これからどうすんの？」
と、エイジ。
私の返事を待たずに続ける。
「俺は残るよ。
このゲームの犯人を────、……っ!?」
隣で、息を呑む音が聞こえてきた。
私は、彼の背中に掌を押し当て、屋上から突き落とした。
赤い髪が素早く視界を横切ると、ぐしゃっ、という音が遠くの方から聞こえてくる。
この高さなら、確実に助からないだろう。
夜の闇に紛れて見えない。
これで、生き残りは私1人だけ。
1億円は、私1人のものだ。
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2018年3月10日 16時
