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マホトが目を伏せ、横目で陸を見た。

「それしか考えられない」

私は断言する。

エイジは黙って事の成り行きを見守っている。

「もう1人の恋人が誰かわからないけど。
……正直に言って。陸が恋人なんでしょ」

彼はゆっくりと目を開けた。

微かに笑い、一筋涙をこぼす。



「バレちゃったね」



陸なら、受け入れてくれると思った。

「俺……、恋人だよ」

泣いちゃいけない。

私は、平静を保たなくては。

「本当なの? 何で……」

リクヲが震える声で陸に訊く。

「本人が認めてるんだから」

エイジが短く言った。

何処と無く緊張しているように見える。



「マホト。
陸を吊らない限り、私たちは勝てない」

という私の言葉に、マホトは陸の横顔を見つめて尋ねる。

「誰がもう1人の恋人なんだよ……?」

「言わない」

と、陸。

エイジが真剣な声音で「時間」と呼びかけた。



「投票。 3、2、1!」

私は陸を指さした。

腕が鉛みたいに重く感じられた。

エイジも陸を投票先に選んでいた。

驚いたことに、マホトも陸を指していた。

さすがに彼は私に入れると思っていた。

それでも構わなかった。

そうなったら夜にマホトをぶちのめし、この手で陸を殺すつもりだった。

マホトは、自分がずっとAAに騙されていた、という事実を受け入れられなかったのかもしれない。

正気を保つためには、少なくとも投票の瞬間には私を信じるしか方法がなかった。

陸とリクヲはお互いに投票していた。

全員、投票のために上げていた腕を下ろす。



「……」と、陸は静かに立ち上がる。

私はあふれる涙を、止められなかった。

彼は私の正面に立つと、頬を伝う涙を軽く拭ってくれた。

「生きて─────」

浮かべられた優しい笑顔。

私が見た、彼の最後の表情。

陸はそれだけ告げると黙って扉の方に向かった。

何の躊躇いもなく扉を開けると直ぐに外へ出る。

瞬間、聞こえてくるモーター音。

それから僅かに断末魔も聞こえた気がした。

彼の死に際を、見届けてあげられないのは残念だった。



─プツッ

最初のようにテレビが独りでに点いた。

【人狼側の人数と村人側の人数が同数になりました。
ゲーム終了です】

【ただし、『恋人』が生き残っています】

その文面を見た瞬間、リクヲが顔を歪めて絶望に泣いた。

エイジは逆に、満足そうに笑った。



【『恋人』の勝利です】



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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2018年3月10日 16時

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