3-14─4-1 ページ43
.
私は階段の端に座り込んでいた。
手すりに重心を預け、ぼうっと
一体何のために、私は今ここにいるのだろう。
何を目的に生き抜けばいい？
私は義父の借金をなくすために、以前の生活を取り戻すために『2回目』を選択した。
なのに、そもそも『1回目』自体が、義父が私を犠牲にした結果だった。
……イケニエに。
無意味じゃないか。
一体何のために、私はこれまで人を殺してきたのだ。
マホトがいつも通りの足取りで私のいる階段の方へ歩いてくる。
ナイフを手に持っていない所を見ると、一度部屋に戻ってから、わざわざもう一度来てくれたのだろうか。
「……」
何も言わず、私の隣に腰を下ろした。
絶望のさなかで、息苦しくて、何もかものあらゆる輪郭がぼやけて感じられる。
不意に、マホトが私の手を取った。
力強く、安心させるように、握り締めてくれる。
「……っ」
心が揺れた。
感情が動き出した。
私は、彼の優しさに甘えて、思い切り咽び泣いた。
*
翌朝、皆が玄関ホールに集まった。
私が1番最後だったようで、外に横たわるはじめの死体を見て、それから私の姿を見て、マホトが呟く。
「はじめは、恋人じゃなかった」
「恋人を殺せなかったことが悔しいの？」
冷めた目を向けるリクヲを無視してマホトはその場を後にする。
すれ違う瞬間に、一瞬だけ、私の方を見つめていた。
続いてエイジもどこかへ歩いていく。
「信じられない」
リクヲが言った。
「この中にこうやって、毎日殺してる人がいる……」
バッと私の方を振り向いた。
「よく平気な顔してられるよね。
どう思ってるの…？
何でこんなことできるの……」
答えを求めていない問いかけだった。
私にも、答える気はない。
不意にまた、涙が込み上げてきた。
そのうちにリクヲは歩き去って行った。
「……勝てるね」
陸がこちらを見ないまま言う。
「……うん」
私は震える声で頷いた。
彼の言う通りだ。
事実上、もうゲームは終わっている。
私と陸とエイジでリクヲに投票すれば、最後の「純粋な村人」を確実に処刑できる。
残りは私、マホト、陸、エイジの4人。
私とマホトは人狼、陸とエイジは村人側としてカウントされるため、両陣営の人数が等しくなり、人狼側が勝利条件を満たす。
そして恋人が生き残っているため、最終的には恋人陣営の勝利となる。
勝てる。
生きて、ここを出られる。
それは揺るぎない事実なのに、涙が止まらなかった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 422人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2018年3月10日 16時
