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「目覚めてすぐに選んでるわけだから頼もしそうに見えた奴か、もしくは大人しそうな奴?」
「……さすがにまだ、さっきの投票だけじゃ読めない」
そう答えると、マホトは暫く私を見つめたまま黙り込んだ。
「……」
ここで負けちゃいけない。
瞬きひとつにも注意しないと私は彼に殺される。
「……まあいいや、今日はあいつを殺そう」
マホトはそう言って立ち上がった。
ひとまず私が襲撃される心配は消えたが、まだ油断出来ない。
彼の言う“あいつ”が、エイジを指していたら────。
「誰?」
「あの生意気で、意外に頭もキレそうな奴」
それが誰を指しているのか分からなかった。
あえて抽象的な表現にして、私の反応を窺っているのか。
─────と、不意に屋上での会話が蘇った。
『……ねぇ、そもそもあんた村人?』
私がエイジに尋ねたときのこと。
『それとも、人狼?』
彼は間髪入れずに答えた。
『村人。 お前は?』
『……人狼』
すると、陸が言った。
『恋人陣営が勝つには、ゲーム終了時に恋人が生き残ってないと』
その言葉にエイジが続けて言う。
『人狼を全滅させて村人の勝利にしたんでは駄目。
……それじゃ俺もお前も死んでるってこと』
『人狼側を勝たせるようにする』
そう言った陸をエイジが見やる。
『俺が襲撃されてもお終い』
それから、私の方を向いた。
『お前次第だな』
*
私とマホトは並んで廊下を歩いていた。
襲撃相手の扉の前で、立ち止まる。
(……こいつか)
─ガチャッ!
マホトがナイフを構えながら勢いよく扉を開けた。
私もその後に続いて中に入る。
襲撃する相手は、てつや。
椅子に座っていた彼は戦いたように立ち上がって距離を取った。
「何で……何で俺なんだよ!」
てつやは焦りの表情で視線を彷徨わせ、一旦テレビを掴み、また手を離した。
武器になるものを探しているのだ。
自分が襲撃対象になるとは思ってもみなかったらしい。
それから椅子を掴むと思い切りこちらに投げ飛ばしてきた。
そして、スタンドライトを振り回す。
マホトが駆け出し、彼を捕らえた。
背中に何度か刃が刺さったが当然それだけでは殺せない。
マホトは諦めて、ナイフを床に捨てた。
暴れるてつやを羽交い締めにし、私に向かって叫ぶ。
「早く殺せ!」
ドクン、ドクン、と鼓動が速くなる。
殺る……? 私が……?
この手で、人を殺す……?
ぎゅっと目を瞑った。
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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2018年3月10日 16時