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「触らないで！」
首輪に触れている皆を制するように虫眼鏡が声を張った。
「まずは説明を見ましょう…」
そう言い終わると同時に
─プツッ
彼の横のテレビが点いた。
そのタイミングの良さはきっと、私たちのこの状況を監視カメラで犯人が見ているからだ。
【ゲームの始まりです】
青い背景に白い文字。
これも、前回と同じ。
テレビから離れた所にいた皆がそろそろと集まってきた。
【建物から外へ逃げてはいけません。
建物の備品を壊してはいけません。
他人に危害を加えてはいけません。
違反した場合、処刑されます】
『処刑』という単語が出てきて私はそれとなく周囲を窺ってみた。
一回目の参加の人はだいたい、こういう所で取り乱す。
「……」
しかし皆、頬を強張らせ、表情を硬くしていた。
取り乱す人も怯える人もいなかった。
【皆さんは村人ですが、人狼が2人紛れ込んでいます】
(今回は2人か……)
なんて思いながら画面を見つめる。
それによると、構成は以下だ。
──────────────
人狼側:人狼 2人
村人側:村人 5人
───預言者 1人
───霊媒師 1人
───用心棒 1人
その他:キューピッド 1人
──────────────
「“キューピッド”って何だよ……」
カップルの彼氏の方(マホト？)が呟く。
その台詞は何処か引っ掛かった。
この状況自体に戸惑うことはなく“役職”に困惑を顕にするなんて。
あいつも二回目？
ふとそんな考えが過ぎった。
「それも説明があるでしょう」
彼の質問に虫眼鏡はそう答えた。
「……お前、参加者なんだよな？」
派手髪が虫眼鏡に訊いた。
確かに、ゲームに詳しい彼はまるで参加者ではなく“犯人”の仲間みたいだ。
「いい質問です」
彼は画面の方を向いていた身体を完全にこちらに向けた。
「実は僕、このゲーム二回目なんです」
やっぱり……と思いつつ、
「二回目？」
と 私は呟くように尋ねた。
“二回目”という言葉に何人かが目配せをする。
それはつまり、私と、明言した彼以外にも二回目の参加となる人がいるということだ。
【各自の正体はカードに書かれています】
「とりあえず確認しましょう」
虫眼鏡の言葉に、各々が身につけている制服のポケットを探り始めた。
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作者名：小桜ふわ
| 作成日時：2018年3月10日 16時
