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マホトが押し殺した声で叫んだ。 1つの人影がふらふらとおぼつかない足取りで森の方へ駆けていく。 その人影、恐らくはシルクが、不意にばったりと倒れた。 くぐもった悲鳴が聞こえる。 暗いため判然としないが、どうやら地面でのたうち回っているようだ。
首輪が締まったのだろう。 彼の足は“境界線”を超えていた。 ……生と死の、境界線も。
やがて、薄闇の景色が完全に静止した。 葉擦れの音だけがやけにはっきりと意識された。 マホトが小さく息をつく。
「……死んだ、ね」
窓から離れ踵を返すと、さっさと歩き出す。 それこそ、逃げるように。 彼は自らの手を汚すことなく、一仕事を終えたわけだ。 エイジは振り向く。
「……運の良い奴」
マホトの背中に投げかけた。 エイジも自室へ帰ろうと歩き出したが、思わず立ち止まる。 昨晩のおぞましい記憶が蘇った。 足元で暴れるはじめ。握り締めた椅子越しに伝わる奇妙な感触。
不意に頭の奥で、何かが噛み合う音が聞こえた。 ……そういうことか。
まだ夜は終わらない。 終わらせてたまるか。
「待って」
エイジは廊下に出て、マホトを引き止めた。
「扉、片っ端から開けてみよう」
エイジは親指の先で並んだ扉を指し示した。
「ああー……なるほど。生存者の中に3人目の人狼がいるなら扉が開く、って発想?」
「そう。 さっき気付いた。 3人目の人狼はわざと出てきてない」
「何で?勝ちたくねぇの? 相談出来た方が有利だろ」
「知るかよ。 吊られない自信でもあんだろ」
エイジは腰に手を当て投げやりに言う。 マホトは「んー」と唸った。
「でも、わかんねぇな。 何でまた?」
「そんなの────」
エイジはマホトが持っていたナイフをふんだくる。
「これに決まってる。 自分で人を殺さなくてもいい。 反撃される心配も、血塗れになる心配もない」
「……なるほど」
マホトが頷く。 エイジは早速廊下を横切り、最初の扉に手をかけた。
ツリメ、陸、と順に部屋を回った。 開かなかった。 ここまでエイジが片っ端から開けようと試みているが、1つも開かない。 マホトはポケットに両手を突っ込み、壁にもたれている。 退屈そうだ。
最後に『関根理沙』と書かれたその部屋のドアノブにはマホトが手を掛けたが、結果は他の部屋と同じだった。
「駄目だ、びくともしない」
「何でだよ!?」
「やっぱり死んだんじゃない? 処刑された2人のうち、どっちかが人狼だった」
「だとしたら無能過ぎる」
エイジは吐き捨てた。 何となく、目の前にある理沙の部屋の扉を蹴りつけた。
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小桜ふわ(プロフ) - 白猫とみせかけてアルビノの黒猫さん» 叫んじゃってください!笑笑 そういったリアクションを頂けるとめっちゃ嬉しいです!d('∀'*) 本当ですか!やったー.*・゚(*º∀º*).゚・*. 今後ともご覧頂けると嬉しいです! ありがとうございます! (2019年5月1日 9時) (レス) id: 43213200ba (このIDを非表示/違反報告)
白猫とみせかけてアルビノの黒猫(プロフ) - 一目惚れ相手が陸君で、キッッッッッッッッターーーー!!って叫びそうになりました。笑笑そろそろふわさんのファンになりそうです、 (2019年5月1日 5時) (レス) id: 18a6a661ff (このIDを非表示/違反報告)
小桜ふわ(プロフ) - (名前)空々さん» ありがとうございますです!! 推薦は本当にただの紛れなんじゃないかと思うんですけど良かったです…!!(*>▽<*) (名前)空々さんも受験生なのですか?もしそうでしたら私が言うのも何ですが、合格まで一緒に頑張りましょうー!! 応援感謝します!!頑張ります!! (2017年12月19日 0時) (レス) id: e6883eaa7b (このIDを非表示/違反報告)
(名前)空々(プロフ) - おめでとうございます!!推薦うらやまです。更新頑張ってください! (2017年12月18日 23時) (レス) id: aab0f67378 (このIDを非表示/違反報告)
小桜ふわ(プロフ) - まちゅさん» ありがとうございますすすすす!!!!恐縮です…! まちゅさんのご期待に添えられるようこれからも頑張ります!応援感謝します.*・゚(*º∀º*).゚・*. ありがとうございますー!! (2017年12月18日 22時) (レス) id: e6883eaa7b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2017年11月25日 12時