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彼は皆に対して優しいのだ。 別に美希さんを庇っているわけじゃない────そう必死で自分に言い聞かせ、叫び出しそうになる衝動をぐっと抑え込んだ。
さすがに危機感を抱いたのだろう。 美希さんが久しぶりに口を開いた。
「私は……最初はこのゲームについていけてなかったけど、今は、慎重に話を聞いてるだけ」
「俺もそう」
エイジが同調した。 そういえば彼も大人しい。
「しっかり聞いて、ちゃんと考えてる。 むしろベラベラ喋ってる奴の方が怪しい」
「そうかな? 皆の為に意見を出すのって大事だよ。 皆の投票で決まるんだから」
私が言うと、エイジは一瞬私を睨んで視線を逸らした。 反論したくても出来ないみたいだ。
「お前は? 誰が怪しいと思うの?」
マホトくんが前傾姿勢になってエイジに尋ねる。 彼は私に追従する判断をしてくれたようだ。
エイジは目を伏せ、渋々といった感じで答えた。
「俺も……河西美希はやけに落ち着いてるなって思う」
「ちょっと……!」
美希さんが血相を変える。 泣きそうな表情だ。 エイジは構わずに続ける。
「自分は投票で吊られないって安心してるように見える」
「前回は誰に投票した?」
シルクくんが美希さんに訊いた。
「ンダホ、くん……」
「前回の投票は関係ない。 皆があいつに投票する流れだったから、人狼だったらその流れに乗るに決まってる」
「ちょっと待ってよ!」
饒舌になったエイジの攻撃は厳しい。 うまいな、ずるいな、と感心した。
エイジは経験者だ。 今は自分と美希さんが怪しまれている、と感じてすぐに手を打ったのだと思う。 美希さんだけを蹴落とす方へシフトチェンジした。
皆が急に美希さんのことを意識し出した。 ちらちらと盗み見て、でも目が合いそうになったら視線をすっと外して。
「私が人狼みたいに……そんな、決めつけないで」
美希さんの声は震えている。 助けを求めるように視線を彷徨わせる。
「そうだよ、口数が少なかったのは俺も同じだし」
陸くんが庇った。 心優しい彼は、空気の変化にかなり動揺しているみたいだ。
「でも陸くんは村人側だった」
すかさず私は預言者としてそう言っておく。 彼の、美希さんに示す優しさが苦しい。 胸を圧迫してくる。
「そうだけど……」
彼は俯いた。 ちら、と私の方を見てきた。 “Aが本物の預言者とは限らない”と言おうとしたのだろうが、結局は言わなかった。 村人と判定された自分を守るためというよりは、私に遠慮してのことだろう。
彼は本当に優しい。
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小桜ふわ(プロフ) - 白猫とみせかけてアルビノの黒猫さん» 叫んじゃってください!笑笑 そういったリアクションを頂けるとめっちゃ嬉しいです!d('∀'*) 本当ですか!やったー.*・゚(*º∀º*).゚・*. 今後ともご覧頂けると嬉しいです! ありがとうございます! (2019年5月1日 9時) (レス) id: 43213200ba (このIDを非表示/違反報告)
白猫とみせかけてアルビノの黒猫(プロフ) - 一目惚れ相手が陸君で、キッッッッッッッッターーーー!!って叫びそうになりました。笑笑そろそろふわさんのファンになりそうです、 (2019年5月1日 5時) (レス) id: 18a6a661ff (このIDを非表示/違反報告)
小桜ふわ(プロフ) - (名前)空々さん» ありがとうございますです!! 推薦は本当にただの紛れなんじゃないかと思うんですけど良かったです…!!(*>▽<*) (名前)空々さんも受験生なのですか?もしそうでしたら私が言うのも何ですが、合格まで一緒に頑張りましょうー!! 応援感謝します!!頑張ります!! (2017年12月19日 0時) (レス) id: e6883eaa7b (このIDを非表示/違反報告)
(名前)空々(プロフ) - おめでとうございます!!推薦うらやまです。更新頑張ってください! (2017年12月18日 23時) (レス) id: aab0f67378 (このIDを非表示/違反報告)
小桜ふわ(プロフ) - まちゅさん» ありがとうございますすすすす!!!!恐縮です…! まちゅさんのご期待に添えられるようこれからも頑張ります!応援感謝します.*・゚(*º∀º*).゚・*. ありがとうございますー!! (2017年12月18日 22時) (レス) id: e6883eaa7b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2017年11月25日 12時