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もう少しここにいる、と言った彼を残し、私は屋上を後にした。
浴場の横にある洗面所に入る。 横に長い洗面台に腰の辺りを預けて立った。 屋上から降りてくる途中でマホトくんの部屋に寄り、彼を呼び出していた。
「どうだった?」
あえて時間をずらして現れてくれたマホトくん。 一緒にいるところを誰かに見られれば、怪しまれる可能性があるからだ。
「決めたよ。 協力する」
私は彼の方を見ないまま、淡々と答えた。
「ただし投票先はツリメくんとは別」
「どういうこと?」
マホトくんが眉を顰める。 あからさまに不満そうな、不審そうな表情だ。
「私は美希さんに入れる」
「は?」
「……そのことをあらかじめ教えてあげる。 今ここでマホトくんが何と言おうと、私は投票先を変えない」
それだけ告げて洗面台から離れると、さっさと立ち去ろうと歩き出す。
「ちょっと待てよ。 強引過ぎない?」
そう言った彼に腕を掴まれ、私は仕方なくその場に留まった。 彼はからかうような口調だったが、ちょっぴり目元が引きつっている。
「陸の説得は成功したのかよ?」
「話はしたけど説得はしてない」
「何で?」
「したら、怪しまれると思った」
嘘だった。 説得のことなんてすっかり忘れていた。
そこで急に不安になった。 胸の奥に真空が広がっていくような感じだ。
勿論、美希さんの存在は気に入らない。 排除したい。 だけど、私にとって一番大事なのは、陸くんを死なせないことだ。 そのための方法として最も分かりやすいのは、当然だが、彼の陣営を勝たせること。
……もし、陸くんと美希さんが同じ陣営なんだとしたら。 美希さんを排除することは、陸くんの敗北に繋がってしまうかもしれない。
もし“確実に陸くんとは別陣営だと分かる相手”がいるなら、いったん美希さんのことは忘れ、そこへ投票を集中させるべきかもしれない。
でも今のところ、そんな相手は思いつかない。 なら、やっぱり美希さんで良い。
「陸くんが誰に入れるかは分かんない。 マホトくんが期待出来るのは私の一票だけ。 でも、大きいでしょ?」
「……、まぁ」
私の中で、迷いは完全に消えていた。
「理沙さんの説得は?」
「協力的だよ。 凄く怯えてるし……。 ただ、美希さんに入れさせるにはそれなりの根拠がないと」
「それは自分で考えて」
彼を突き放し、私は自室へ戻ったのだった。
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小桜ふわ(プロフ) - 白猫とみせかけてアルビノの黒猫さん» 叫んじゃってください!笑笑 そういったリアクションを頂けるとめっちゃ嬉しいです!d('∀'*) 本当ですか!やったー.*・゚(*º∀º*).゚・*. 今後ともご覧頂けると嬉しいです! ありがとうございます! (2019年5月1日 9時) (レス) id: 43213200ba (このIDを非表示/違反報告)
白猫とみせかけてアルビノの黒猫(プロフ) - 一目惚れ相手が陸君で、キッッッッッッッッターーーー!!って叫びそうになりました。笑笑そろそろふわさんのファンになりそうです、 (2019年5月1日 5時) (レス) id: 18a6a661ff (このIDを非表示/違反報告)
小桜ふわ(プロフ) - (名前)空々さん» ありがとうございますです!! 推薦は本当にただの紛れなんじゃないかと思うんですけど良かったです…!!(*>▽<*) (名前)空々さんも受験生なのですか?もしそうでしたら私が言うのも何ですが、合格まで一緒に頑張りましょうー!! 応援感謝します!!頑張ります!! (2017年12月19日 0時) (レス) id: e6883eaa7b (このIDを非表示/違反報告)
(名前)空々(プロフ) - おめでとうございます!!推薦うらやまです。更新頑張ってください! (2017年12月18日 23時) (レス) id: aab0f67378 (このIDを非表示/違反報告)
小桜ふわ(プロフ) - まちゅさん» ありがとうございますすすすす!!!!恐縮です…! まちゅさんのご期待に添えられるようこれからも頑張ります!応援感謝します.*・゚(*º∀º*).゚・*. ありがとうございますー!! (2017年12月18日 22時) (レス) id: e6883eaa7b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小桜ふわ | 作成日時:2017年11月25日 12時